教室の片隅で、闇に染まるのは、彼。――染めたのは、誰。
- ★★★ Excellent!!!
犬笛を吹いた人間は、誰よりも狂気に染まっていた。
そして何より、自分が犬笛を吹いていると信じていた。
――信じ込まされていた。
本作の恐怖は、誰が悪だったのかを断定しない点にある。助けを求める声が届かなかった過去、正義を名乗る群衆、そして笛を吹いていると思い込んだ語り手。そのすべてが重なり合い、いつの間にか狂気は個人ではなく空間に染み込んでいく。教室という日常の片隅で、気づかぬうちに役割を与えられ、音に反応してしまう構造そのものが、静かなホラーとして描かれている。読み終えたあと、残るのは犯人探しではなく、「自分は今、どの音を聞いているのか」という不安だ。
だがその笛が、本当に彼のものだったのかは、最後まで分からない。