その言葉は、のろいか、それともおまじないか

 死んだ人が一日だけこの世に戻れるという理がある世界(天国を行くことを放棄するというシビアな条件付きですが)。生きることに絶望している主人公の前に、「なぜあんな太陽みたいな子が?」と自殺を皆に驚かれ嘆かれている同級生が復活して現れます。彼は実は生に疲れて自殺し、天国でその生を続けることを拒んで復活したのですが、同じ悩みを持つ者(とおそらくは睨んでいた)である主人公と共に一日を過ごし、自分の身の上を語り、名を明かし名を呼び、挙句に「死ぬな、生きろ」と言葉をかけます。生に絶望し自殺を考えていた主人公は、この言葉の呪縛で死ぬことができなくなる。死んだ同級生は消えてしまう以上、主人公の生を支えてくれるわけではない。彼の言葉は無責任な呪いのようです。
 しかし呪い(のろい)となるか呪い(まじない)となるかは、結局渡す側と受け取る側次第だと思います。主人公と同級生はたった一日ではありますが互いを信頼し合う仲となりました。同級生は身勝手と自覚しつつもそれでも死んでほしくないという祈りを手渡し、主人公もそれが重荷であるとわかっていてもあえてそれを受け取る。このときの言葉は決して呪詛ではなく、主人公を守るためのおまじないになっているはずです。状況は何一つ変わっていないけれど、彼からもらったお守りだけはある。人と心を通わせるという小さな「生きる力のカケラ」を主人公はこれからもかき集めながら、歩いて行くのではないでしょうか。