「余白の声」第18話「『理解』という名の傲慢」

秋定弦司

「その『理解しました』は、本心ですか」

  よく、「あなたの考えはよく理解いたしました」という言葉を耳にします。

 しかし、それは本当に「理解」なされたうえでのお言葉でしょうか。

 似たような言葉に「分かりました」、「承知しました」という言葉がございます。


 しかし、「似ている」だけでその意味は全く違います。

 前者は「あなたのお考えは私にも『伝わりました』」とでも申せばよろしいのでしょうか。

 後者はいたって単純。「指示」に対する「受領」――。深い意味はございません。

 

 語彙力が少なく申し訳なく存じますが、どうぞご容赦を。

 

 では、質問を少し変えさせていただきます。

「理解」という言葉の意味についてお考えになられたことはございますでしょうか。

「あなたのお考えはよく理解いたしました」――ならば私の「お考え」をあなた様の言葉で説明していただけませんでしょうか。

 口頭でも結構です。文書にしていただけると、なおありがたいのですが……。


 ……答えられませんよね。「理解した」という言葉を使えば私を納得、意志、そして行為の操作をさせることができる――その醜い魂胆が露骨でございます。

 しかしながら、それを見抜けないほど私の目は衰えてはおりません。


 さて、説明できないのであれば、「理解」という言葉の誤用……こればかりは致し方ございません。

 しかしながら「『理解』したフリをする」……これほどの侮辱はございません。

 とはいえ、謝罪は求めません。もはや「謝罪」……いえ、あなた様のおっしゃる言葉……もっといえば、「謝罪の言葉のように聞こえる音」に興味なぞございませんから。


 さて、「私の考えをよく理解いたしました」との言葉への嫌悪感を申しましたが、私本人以外に完全に私の考えていることを理解できない人物はいないことは重々承知いたしております。

 しかしながら、あなた様の言葉でお答えしていただけるのであれば、たとえそれが的外れな内容であったとしても、その誠意だけはありがたく頂戴させていただきます。


 ここで勘違いをなされたくないのは、私とてあなた様のお考えを完全に理解などできません。


 お互いの考えが完全に理解できるならば、これほど便利なことはございません。

 しかしながら、それができない――それこそが人間が人間であることの「欠点」――とまで言えば言い過ぎでございましょうか。


 ただ、私が申し上げたいのは「理解」という言葉を軽々と使っていただきたくない……その一点でございます。


「わからない」ならそのようにおっしゃってください。その言葉自体に私は怒りを覚えることも、ましてや声を荒げることも致しません。私とて同じで「わからない」ことは多数ございます。


 ……

 ……

 ……


 だが、「理解した」というならばその内容も具体的に示せ。できないなら黙れ。

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