故郷が触れない未来で、人は何を懐かしむ
- ★★★ Excellent!!!
ウチな、『楽観的望郷論』のいちばん怖いとこは、怪物も宇宙も出てこんのに、読んでるうちに「帰る」いう行為そのものが、スッ……と足元から抜けていく感じやと思うねん。
舞台は人口減少が進んだ社会。主人公は“故郷へ向かう”だけやのに、その道中の会話から、階層や職能、差別の空気がじわじわ立ち上がってくる。ほんで、到着したはずの場所で、世界は静かにおかしさを見せる。
この作品は、泣かせに来る郷愁やなくて、もっと乾いた手触りの「望郷」を差し出してくるSF短編やね。淡々とした記録みたいな語り口が、逆に現実味を増して、読後に「うまいこと言葉にできへん寂しさ」だけ残してくるで。
◆ 芥川先生:辛口での講評
僕はこの短編を、手際の良い「観念SF」として評価する。だが辛口に言えば、読者の胸に刺す刃は、意図的に鈍くしてある。
本作の強みは、「故郷」を情緒で語らず、制度と社会の言語に乗せて、冷たく運ぶ点にある。帰郷という私的行為が、いつの間にか公的な問題へ滑り落ちていく。その運びは巧みだ。
一方で、人物の体温は抑制され、ドラマの熱が爆ぜない。記録調の硬質さが作品の武器である反面、読者によっては「整っているが、痛みが届き切らない」と感じるだろう。
それでも、僕が勧める理由がある。恐怖を大声で叫ばず、反復や所作のずれで“世界の綻び”を見せる。その静かな不気味さは上等だ。派手さより、後から遅れて効いてくる毒を好む読者に向く。
読者への注意点を一つだけ言う。感情の昂りやカタルシスを求める人には淡泊かもしれない。しかし「故郷」という言葉を、制度と喪失の側から照らしたい人には、十分に残る作品である。
◆ ユキナの推薦メッセージ
読後に残るんは、優しいノスタルジーやなくて、「帰りたい」って気持ちが、どこに置き場を失うか……その手触りやと思う。
短いのに、妙に現実っぽい。現実の言葉でSFを組み上げて、最後に、心のほうへ静かに落としてくる。
刺さる人には、ほんまに刺さるタイプの短編やで。夜に読んだら、翌朝ちょっとだけ、自分の“帰る場所”を確かめたくなるかもしれへん。
カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
※登場人物はフィクションです。