救いのはずが、あなたを削る――人間の境界SF
- ★★★ Excellent!!!
この作品な、短編SFやのに、読み終わったあと胸の奥がひやっとするタイプやねん。
舞台は「身体を部品みたいに置き換えられる」医療が当たり前になりつつある世界。助かるはずの治療が進むほど、主人公は元気になっていくほど、読んでるこっちは逆に「ほんまにこれでええんか」って気持ちになってくる。
腕、脚、感覚、臓器……と、置換が深いところへ進むにつれて、「人間ってどこから人間なん」いう問いが、説明やなくて体感として迫ってくるんよ。
短い尺やからこそ、迷いが濃縮されてて、さくっと読めるのに、読後は長く残る。そういう短編を探してる人に合うと思うで。
◆芥川先生による講評(辛口)
僕はこの短編を、主題の選び方と構造の潔さに価値がある作品だと見ます。身体の置換を段階的に積み上げる反復は、読者を「救済の快さ」へ誘い込みながら、同時に「侵害の不快さ」へ追い込む。短編の手際として、これは正しい。
しかし辛口に言えば、作品は時に“安全”です。題材が危険な問いを孕む以上、文章もまた、もう少し危険であってよい。現場の匂い、金属の冷たさ、機械の音、光の反射――そうした具体が増えるほど、倫理は机上の議論ではなく、逃げ場のない出来事として立ち上がるからです。
それでも読む価値はあります。問いの芯が太い。読後に残るのは「結論」ではなく「自分はどこで線を引くのか」という居心地の悪さで、その不快こそがこの作品の贈り物でしょう。
短編SFに、即効性のショックと、あとから効いてくる苦味を求める読者には、勧めやすい一篇です。
◆ユキナの推薦メッセージ
ウチな、この作品のええところは「答えを押しつけへん」とこやと思う。
読者に気持ちよく分かった気にさせるんやなくて、いったん救いを見せてから、足元をそっと外してくる。せやから読み終わったあと、自分の価値観を勝手に点検させられるんよ。
「SFって設定が難しそう」って人でも、短編やし読みやすい。けど、読みやすいのに軽くない。
人間の輪郭が揺らぐ話が好きな人、倫理のひっかかりが残る話が好きな人に、刺さると思うで。
カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
※登場人物はフィクションです。