妖怪を理屈で祓う道士少女、モラトリアム譚
- ★★★ Excellent!!!
『妖怪演義 〜とある道士のモラトリアム〜』はな、妖怪(妖) と ギルド と 術式 が同じ鍋で煮込まれてる異世界ファンタジーやねん。
主人公は、どこか世間と距離を置いて生きてきた道士の少女。煙の匂いが似合う、淡々とした気配の子や。そこへ生活感たっぷりの兄妹傭兵が絡んできて、世界が“動き出す”。
この作品の魅力は、妖怪退治を「気合い」や「根性」だけで押し切らへんところ。
相手が妖怪であっても、ちゃんと理屈と手順がある――その手触りが、バトルの説得力になってる。設定用語も多いけど、「分からんまま置いてけぼり」にしないように、会話や状況で噛ませてくるのがええ感じやね。
ただし辛口で言うと、この作品は 読み手を選ぶ。
縦読み推奨のレイアウトや、用語の密度、淡々と進む温度感――ここがハマったらクセになる一方で、「軽くサクッと」は期待せん方がええ。逆に言うたら、腰を据えて世界の手触りを楽しむタイプの人には、かなり刺さるやつやで。
◆ 芥川先生:辛口の講評
僕はこの作品を、妖怪譚の衣を借りた「猶予」の物語として読んだ。
題名にある“モラトリアム”――それは、救済の延期であり、決断の先送りであり、あるいは自己欺瞞の静かな持続でもある。
長所から言おう。
まず、異界の機構が「それらしく」組まれている。妖怪・術式・ギルドという装置が、作者の気分で伸び縮みしていない。ここは誠実だ。読者は安心して、怪異の場に立てる。
次に、人物の温度差が良い。生活に近い兄妹が現実を背負い、主人公の少女が乾いた距離を保つ。この対照は、会話だけで緊張を生む。
しかし辛口を貫くなら、弱点もはっきりしている。
この作品は、出来事が面白いのに、「何が読者の胸に残るべき芯なのか」が、まだ細い。主人公は魅力的だが、魅力の輪郭が“性質”に留まっている時間が長い。強い、淡い、世間知らず――それは性格であって、信念ではない。
信念とは、折れてはいけない一点だ。折れるか折れないかで、人間は露呈する。僕はその一点――譲れないもの、恐れているもの、救われたくない理由――を、もっと早く嗅がせてほしい。
もう一つ、形式についても触れておく。縦読み推奨という工夫は面白い。だが工夫は、ときに読者へ小さな負担を強いる。負担を払った人間に「払ってよかった」と思わせる決定打が、早い段階で必要だ。
つまり、装置と技巧はある。あとは、それらが読者の心臓へ届くように“刺す”だけでいい。
とはいえ、僕はこの作品を薦めたい。
妖怪譚に「理屈」と「気配」を求める人間――派手さよりも、異界の湿度と、人の心の陰りを好む人間には、確かな手応えがあるだろう。
◆ ユキナの推薦メッセージ
読んでて思ったんは、この作品、「妖怪バトルのカタルシス」 と 「主人公の心の空白」 が並走してんねん。
派手な“俺つええ”で押すんやなくて、妖怪の怖さを残したまま、理屈で捌く――そこが気持ちいい。ほんで、主人公が何を抱えてるんか、何を先延ばしにしてるんか……そこが気になって、ページめくってまう。
せやからオススメしたい読者はこんな人やで。
・妖怪とか怪異の「湿った雰囲気」が好き
・設定が組まれてる世界で、納得できる戦いを読みたい
・主人公の“言わへん部分”を追いかけるのが好き
逆に、軽快テンポ一本とか、説明ゼロの直感型バトルだけ求めてる人には、最初ちょい重いかもしれん。けどハマったら、じわじわ中毒性あるタイプやと思う。
カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
※登場人物はフィクションです。