とても静かで、あたたかい余韻の残る作品

この物語のいちばんの魅力は、「何も起こらない正月」をここまで豊かに描いている点だと思います。朝日、ストーブ、餅の音、だしの香り、猫たちの配置――生活音や温度が丁寧に積み重ねられていて、読んでいるこちらの身体感覚までゆるやかにほどけていきます。特に猫たちの描写は秀逸で、それぞれの性格や距離感が自然に伝わり、「この家の一員」として確かに息づいています。


読み終えたあと、自分の家の朝の匂いや、誰かと囲んだ食卓を思い出したくなる、そんな作品でした。