荷造りの作法
紫陽_凛
スーツケースの中に
荷造りがてきめんに苦手だ。
これでも回数を重ねてうまくなったほうだと思う。
帰省するときには、二泊三日用とシールを貼られていたピンクのスーツケースを使う。何泊だろうが何十泊だろうがコンパクトなものを使うのは、これ以上大きいと持って運ぶのが大変だからだ。帰省には公共交通機関を使うし、そのあいだこの大きな荷物を引っ張って歩くことを考えると、できるだけコンパクトなほうがいい。
それで、そのコンパクトなスーツケースの中にありったけの服と日用品を詰め込んでいく。いくのだけど、どんなにくふうしても上手くいかない。夏物だと薄くてかさばらないからいいのだけれど、冬のぶ厚くてもこもこのセーターなどは場所をとってしまう。セーターを詰め込むために持参しようと思っていた本を諦める、などは日常茶飯事で、ひどいときは「靴下を現地調達しよう」、で解決することもある。大抵、できあがった荷は、致命的に何らかが足りないのだ。
決められたスペースにあれこれと考えながらものを詰めていく作業は人生に似ているなと思う。二十四時間という決められた箱の中にどうやって生活と趣味と睡眠を詰めていくか、みたいなところが。
足りない荷をごろごろひきながら、私は「いろいろが足りないまんま生きているのかもなぁ」と思うことがある。もっと頑張ればきっと、靴下の二足や三足入れていけるのだけれど、「なくてもいっか。現地でどうにかしよう」と片付けてしまえるところが私の強みであり弱みなのだ。
でも足りなすぎるのもいけないだろう……とも思い。今日も「足りない」を補いながら生きていこうとしている。
姿勢だけは。
荷造りの作法 紫陽_凛 @syw_rin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
関連小説
もしかして共感覚!?/ハル
★60 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます