主人公の蓮見の、口寄せ師(デジタ・イタコ)という職業が新しく、お洒落で斬新な設定がとても光ります。
さらにグレン・グールドの「バッハ」が作品の雰囲気を盤石のものにしておりますね。
死人に口無し⋯とは言われますが、死者の脳の残留思念(ログ)を15分だけ読み取れる蓮見。
そこで紡がれる死者の記憶と想いが胸に刺さります。
ただ語られるかも想いは決して甘いものだけではなく⋯?
「完璧な救済は無い」という蓮見の心情は一見ドライではありますが、様々な死者と向き合ったからこそ出る悟りなのかなと思います。
サイバー大正というなかなか見ない世界観はとても読み応えがあり、素敵な読了感があり、思わず「ありがとうございます」と言いたくなります🙏✨
超オススメ作品です(*´ω`*)
まず話したいのは、本作の文章についてです。
『一九五五年の若き日の録音とは、まるで別の生き物だ。かつての疾走感は消え去り、そこにあるのは、死を目前にした人間だけが手に入れる沈黙――音と音のあいだに残された、言い残しの余白だった』(本作より)
こんな文章、書けますか?もちろん私は書けません。私だけではないはず⋯⋯、そう、誰も書けません!気取っているかと言われれば気取っている。けれど全然嫌味がない。それどころか、スタイリッシュなモデルが着こなすパリコレの衣装⋯⋯。とにかくすごいと言うことです!
それと、本作を読んでいただければわかりますが、文章だけの作品ではもちろんありません。そこで紡がれる珠玉のストーリー、依頼者が亡くなった人物の声を聞くという内容なのですが、そこにもしっかりと、そして想像を超える人間模様が描かれています。
もう目の中に、くっきりと映像が浮かんできます。柔らかい霧が漂っているようなセビア調美しい映像が。
作者様の才能に感服です!
本作は、蒸気と電子が混在する「サイバー大正」の帝都を舞台に、死者の残留思念(ログ)を義体に憑依させる職能「口寄せ師(デジタ・イタコ)」の活躍を描いたSF短編です。
15分という接続時間の中で、生者と死者の断絶した縁を繋ぎ直す、美しくも儚い物語です。
この接続時間が限られているからこそ、本作においては言葉の一つひとつが重みを持っております。
また、五感を刺激する情景描写も非常に緻密です。
ページをめくるたび、読者は文字から温度や匂い、音までもが立ち上がってくる印象を受けるでしょう。
サイバーパンクとノスタルジックが絶妙に融合されており、フィルム・ノワールにも似たビターな物語が読者を掴んで離しません。
今宵は、コーヒー片手に「大人のための物語」はいかがでしょうか?
冤罪事件を犯してしまった刑事さんが、無実の罪を着せ、獄中死させた犯人に許しを乞うため、口寄せ師(イタコ)を頼ってくる短編です。
ネタバレになるので避けますが、やり切れない気持ちにはなります。
「記憶とは、自正気を保つための装置」とかナントカ。
1話目にあった言葉に、まずは納得しました。
記憶として意識して取り出せるのは一部で、今の自分の存在を保証するなにかなのかもねぇと共感しました。
大正時代の、近代化の間にある時代×サイバー×イタコの絶妙なテイストのバランスが、個性的でセンスがあるなと思いました。
おもしろかったです
クラシックの音楽と、自身の能力を身に纏った、青年による探偵業のような内容です。
どこかしらAIが活躍する場面もあり、過去の経験を呼び覚まして、問題を解決していく流れ。
古いイメージがあるレコードも上手い具合に現代を彩り、読んでいて、目新しいものがありました。
地の文の描写も巧みで、物語に引き込む力もあり、これからの物語にも期待と思いきや、短編で終わらせるという、余韻をもたせる締め方。
こんな後腐れない表現も悪くはないと思います。
全体的に物語の構造がよく出来上がっており、小説好きな読者さんも納得するような力作だと思います。