半ば以上? 人間とその行い、そして心情への諦念めいた悟りを抱きつつも、
しかしなお自分に出来ること……依頼人や、自分と助手(小春さん)がどうにか世界に立って歩み続けるために、やれることを真摯に尽くしてくれる口寄せ師(デジタ・イタコ)、
〝蓮見さん〟がどこか寂しく、切なくも〝生と死の真剣さ〟についてマイペースに一生懸命で(ちょっと詩的に斜に構えて、彼なりのマイペースで物事を捉えるのは、そうしないと〝死者の記憶〟という毎度の一大事にいつか取り込まれてしまうかもしれない、からなのでしょうか……)、
『どうか無理なく頑張って、またレコードやコーヒーを小春さんと楽しめる明日を迎えて……!!』と、心より応援したくなりました。
――というより、持ち込まれる事件の2回ともに、
口寄せの該当者オリジナルの人生と、それら人々が抱える、
〝内世界、そして口寄せによる真実(の一端)からさらに影響が拡大していく外世界の変貌・もしくは裏側の顕現〟が、
まるで鉛の塊を分厚い刃にしたかのようにどこまでも重く鋭く鈍く光っていて(真実のほんの一部ですから、完全に透き通ることはきっと無いのだろうと感じられました)、
あまりの重圧と責任を伴った〝かつての存在の証〟に、読んでいる私は度肝を抜かれどおしだったからです。
こんな凄まじいお仕事を、仕事≒日課としてこなしていく蓮見さんは本当に頑張り屋な方だと思えましたし、
どうしても日を追う毎に重たくなる、抱え込むものが増えていく心身を(蓮見さんは奥に秘めた優しさと真摯さからか、『行き場を失った感情の断片を密かに手元に残している』という激烈に重く、つらいだろう負担と救済を、その心と体で毎回受けてくれている方ですし……!)、
無理矢理にでも(それこそコーヒーやレコードの落ち着き、好物で)気張らせて、依頼を最大限誠実にこなしてくれているのだな、と信じられました。
そんな蓮見さんの心の支えには、真面目ながらも情感豊かな小春さんの存在も大きいのだろうと思えます。
コーヒーやレコードを共にする、小春さんと蓮見さんとの少し硬質ながらも、ごくゆったりとした情景には見ている私も凄く癒やされます……!!
蓮見さんと小春さん、素敵で実直、そして頑張り屋なお二人に出会えて誠に良かったです。
これからも二人のゆるやかながら、頑張る時にはフルに頑張っていく日々へエールを贈らせていただきます。
蓮見さん、小春さん、どうかたまにはお休みしてフルーツパーラーや観劇などにお出かけしてみてください……!
心が寂しくなったり、切なくやりきれなくなってしまうお仕事だからこそ、
ひと時でも安寧や楽しみをたっぷりと得てくださいませ……!
最初から最後まで、硬くも切ない雰囲気が抜群で、誠に面白い物語でした。
桃馬 穂さん、SFレトロに厳しくも優しい、素敵な物語を執筆、公開していただき、心よりありがとうございました!🙇♀️
主人公の蓮見の、口寄せ師(デジタ・イタコ)という職業が新しく、お洒落で斬新な設定がとても光ります。
さらにグレン・グールドの「バッハ」が作品の雰囲気を盤石のものにしておりますね。
死人に口無し⋯とは言われますが、死者の脳の残留思念(ログ)を15分だけ読み取れる蓮見。
そこで紡がれる死者の記憶と想いが胸に刺さります。
ただ語られるかも想いは決して甘いものだけではなく⋯?
「完璧な救済は無い」という蓮見の心情は一見ドライではありますが、様々な死者と向き合ったからこそ出る悟りなのかなと思います。
サイバー大正というなかなか見ない世界観はとても読み応えがあり、素敵な読了感があり、思わず「ありがとうございます」と言いたくなります🙏✨
超オススメ作品です(*´ω`*)
まず話したいのは、本作の文章についてです。
『一九五五年の若き日の録音とは、まるで別の生き物だ。かつての疾走感は消え去り、そこにあるのは、死を目前にした人間だけが手に入れる沈黙――音と音のあいだに残された、言い残しの余白だった』(本作より)
こんな文章、書けますか?もちろん私は書けません。私だけではないはず⋯⋯、そう、誰も書けません!気取っているかと言われれば気取っている。けれど全然嫌味がない。それどころか、スタイリッシュなモデルが着こなすパリコレの衣装⋯⋯。とにかくすごいと言うことです!
それと、本作を読んでいただければわかりますが、文章だけの作品ではもちろんありません。そこで紡がれる珠玉のストーリー、依頼者が亡くなった人物の声を聞くという内容なのですが、そこにもしっかりと、そして想像を超える人間模様が描かれています。
もう目の中に、くっきりと映像が浮かんできます。柔らかい霧が漂っているようなセビア調美しい映像が。
作者様の才能に感服です!
本作は、蒸気と電子が混在する「サイバー大正」の帝都を舞台に、死者の残留思念(ログ)を義体に憑依させる職能「口寄せ師(デジタ・イタコ)」の活躍を描いたSF短編です。
15分という接続時間の中で、生者と死者の断絶した縁を繋ぎ直す、美しくも儚い物語です。
この接続時間が限られているからこそ、本作においては言葉の一つひとつが重みを持っております。
また、五感を刺激する情景描写も非常に緻密です。
ページをめくるたび、読者は文字から温度や匂い、音までもが立ち上がってくる印象を受けるでしょう。
サイバーパンクとノスタルジックが絶妙に融合されており、フィルム・ノワールにも似たビターな物語が読者を掴んで離しません。
今宵は、コーヒー片手に「大人のための物語」はいかがでしょうか?
冤罪事件を犯してしまった刑事さんが、無実の罪を着せ、獄中死させた犯人に許しを乞うため、口寄せ師(イタコ)を頼ってくる短編です。
ネタバレになるので避けますが、やり切れない気持ちにはなります。
「記憶とは、自正気を保つための装置」とかナントカ。
1話目にあった言葉に、まずは納得しました。
記憶として意識して取り出せるのは一部で、今の自分の存在を保証するなにかなのかもねぇと共感しました。
大正時代の、近代化の間にある時代×サイバー×イタコの絶妙なテイストのバランスが、個性的でセンスがあるなと思いました。
おもしろかったです
クラシックの音楽と、自身の能力を身に纏った、青年による探偵業のような内容です。
どこかしらAIが活躍する場面もあり、過去の経験を呼び覚まして、問題を解決していく流れ。
古いイメージがあるレコードも上手い具合に現代を彩り、読んでいて、目新しいものがありました。
地の文の描写も巧みで、物語に引き込む力もあり、これからの物語にも期待と思いきや、短編で終わらせるという、余韻をもたせる締め方。
こんな後腐れない表現も悪くはないと思います。
全体的に物語の構造がよく出来上がっており、小説好きな読者さんも納得するような力作だと思います。