救いきれない想いが、静かに夜へと溶けていく——未練と祈りの文芸SF。
- ★★★ Excellent!!!
静謐な世界観と詩的な文体が響き合い、テクノロジーの先にある人間の未練や祈りをすくい取る、成熟した空想科学小説です。
第一話では「不完全な供養」というテーマのもと、母の秘密を沈黙ごと抱きしめる綾乃の選択が、静かな痛みと深い余韻を残します。
第二話では、正義や制度の限界が描かれ、善意の隙間に生まれる歪みが胸に迫ってきます。
そして、結末では口寄せをノイズを物語の内部に封じ込める行為として描き、語り手の矜持と疲労がにじみ出ていました。真鍮の歯車の手触りが、この物語の「割り切れなさ」への誠実な応答として、静かで美しい余韻を響かせています。
冒頭から最後まで、心の機微に深く触れてくる作品でした。本当にありがとうございました。