第16話 飯塚敏郎の日記(日付未記載)

里美が施設に入ってから、あの車は動かせないでいる。


解約しようとすると、管理会社の男が「契約は続いている」と笑うのだ。


里美の施設代も「会の施し」とやらで、ほとんど費用は掛かっていない。


時々見に行っている。


里美がうわごとのように、「中に翔がいる」と言うからだ。


最近気づいたことがある。


車のドアノブが綺麗なこと。


まるで誰かが定期的に開けているように。


俺じゃない。


中に入ったら、引き摺り込まれる気がする。


あの終わらない昭和の熱気の中に。


<二丁目の駐車場の話 完>

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二丁目の駐車場の話 雨後乃筍 @UGO_no_TAKENOKO

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