稲穂を守った猫の願いが、異世界で少年を導く――静かに泣ける収穫の物語

ウチ、この作品を一言で言うたら「お米と、守りたい気持ちの物語」やと思うねん。

舞台は派手な戦争や冒険やなくて、もっと生活に近いところ。
収穫の匂い、土の湿り気、食卓のあったかさ……そういう“手触り”が先に来る異世界ファンタジーやね。

主人公側にあるのは、賢さや最強の力っていうより、働いて、見張って、守って、待つという地道な強さ。
だから読んでると、胸を殴るような盛り上がりよりも、じわっと沁みる場面が積み重なっていく。

短編寄りの読みやすい分量で、読み終わったあとに、白いごはん食べたくなるやつ。
「派手さより、やさしい余韻がほしい人」に合うと思うで。【】

◆ 芥川先生の講評(辛口/ネタバレなし)

僕はこの作品を、清潔な寓話として評価します。
ただし辛口に言えば、それは同時に、汚れや棘の不足でもある。

まず美点から述べましょう。
題材が勝っている。米、収穫、守護、そして食卓。これらは人間の生活の核心で、象徴としても強い。
猫という存在を「働く者」「守る者」に置くことで、可愛らしさが甘さに沈まず、労働の誇りへと接続されている。ここは巧い。

しかし欠点も明瞭です。
物語運びが良すぎて、読者の疑念が芽生える前に片づいていく。いくつかの出来事は、因果の鎖が短く、奇跡が“手続き”のように見える瞬間がある。
また、脇役たちの欲や怖れが薄い。彼らが「機能」として並ぶと、主人公の徳が際立つ代わりに、世界が平板になる。世界が平板であれば、守る対象の重さもまた軽くなるのです。

さらに言えば、敵や障害は“象徴”としては働いても、生活の現実としてはまだ薄い。
畑を脅かす不穏が、生活の労苦や経済の圧力と絡み合うところまで深まれば、作品は寓話から小説へ、もう一段強く跳ねるでしょう。

――とはいえ、欠点はそのまま「向き不向き」にも転じます。
この作品は、人生の泥を描きたいのではなく、泥の中でも残る善意を描きたいのだろう。
従って僕の勧めはこうです。

緻密な政治劇や硬質な世界設定を求める読者には、軽く映るかもしれない

けれど、一篇のやさしい物語として心を整えたい読者には、確かな効能がある

「守る」という行為を、剣ではなく生活の手触りで読むことができる

甘味のある椀は、時にそれだけで救いになります。
ただ辛口の僕としては、その甘味の輪郭をもっと鋭くするために、ほんの少しの苦味を加えてほしい……そう感じました。【】

◆ ユキナの推薦メッセージ

芥川先生、だいぶ辛口やったけど、ウチはな、これは「やさしい話」を狙ってちゃんと当てにいってる作品やと思うねん。

どぎつい悪意や修羅場で引っぱらへん代わりに、
守ること、待つこと、食べること――そういう毎日の価値を、最後まで手放さん。

刺さる人には、静かに深く刺さるやつ。
疲れてるときほど、効くと思うで。

カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
※登場人物はフィクションです。