青春が点数になる女子校で、最下位が空気と数値の支配をひっくり返す。

『青春』って、ほんまは自分の体温で感じるもんやのに――この作品はそれを数値にしてまう。
女子校の空気、SNSっぽい視線、無言のランキング。そんな息苦しさを「青春値」という仕組みにギュッと詰めて、主人公の“最下位”から物語を走らせてくるんよね。

主人公は、目立ちたいわけでも正義を振りかざしたいわけでもない。けど、放っとかれへん場面で、つい動いてしまう。
この「動いてしまう子」の軽快な語りが、コメディのテンポで世界のしんどさを見せてくれるから、読み心地は軽いのに、刺さるとこは刺さるで。

◆芥川先生:辛口講評

僕はこの作品を、着想の鋭さに対して、着地がまだ甘い短編として薦めます。
青春を数値化するという暴挙は、現代の「評価されたい」「外れたくない」という不安を、非常に分かりやすい形に変換している。そこがまず巧い。

また、主人公の語り口が良い。自嘲や諧謔が、空気の暴力を重たくしすぎずに運び、読者を置いていかない。短編に必要な速度がある。
ただし辛口に言えば、その速度ゆえに、制度の核心――つまり「数値がどう人間を変えるか」という刃が、まだ十分に振り下ろされないまま終わる印象も残ります。

この作品を楽しめるのは、こういう読者です。
・学園の“空気”や評価社会を、風刺コメディとして味わいたい人
・口語のテンポでサクッと読めて、刺さる設定が欲しい人
・物語が「決着」より「始動」の余韻を残すのが好みの人

一方で、短編に「きれいな決着」を求める読者には、物足りなさが出るかもしれない。そこは、欠点であると同時に、次の一手への余白でもある。
僕はその余白を、読者が自分の現実へ持ち帰るための“鏡”として受け取るのが、この作品の読み方だと思います。

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 カメラの角度をちょい直して、ウチは深呼吸した。今日はオンライン講評会。トオルさんとユヅキさんは顔出し、文豪のみなさんはチャット参加や。

「ユキナ:今日は『青春値足りてますか?』柳カエデさんの完結短編、3話まとめて講評会やで。“青春を数値化”って設定と、語りのテンポが注目ポイント。ネタバレは避けつつ、刺さった“空気”から話していこな」

 ウチの呼びかけに、トオルさんが頷いてマイクを入れる。画面越しでも、分析モードに入った空気が伝わってきた。

「トオル:僕はまず“青春偏差値”が学力より効くって設計が強いと思った。評価が数字になると、人は行動を最適化しちゃう。短編3話で、導入→圧→動き出しの因果が早いのも良い。あとは“装置”の描写が、世界のルールを支えてるね」


 トオルさんの「設計」の話を受けて、ウチはユヅキさんの表情を見る。頷き方が、もう“余韻”を掴んでる感じやった。

「ユヅキ:私は、数字そのものより“息が詰まる気配”に惹かれました。笑いの軽さがあるのに、ふっと冷える瞬間がある。主人公の自嘲は、盾でもあり祈りでもあるように見えるの。短い言葉が、心に棘として残る配置が上手いですね」


 ユヅキさんの「冷える瞬間」に、ウチも思わず笑ってうなずいた。軽さで運ぶからこそ、痛みがちゃんと見えるんよな。

「ユキナ:わかるわぁ……笑えるのに、教室の“空気”が重たいねん。テンポ良う進むから、ウチらも置いてかれへん。ほんで、主人公の一言が“自分の居場所”を測ってる感じがする。ほな先生方、チャットで自由に投げてください。」

 ウチが合図すると、チャット欄が少しだけざわつく。最初に通知が跳ねたのは、芥川先生やった。

「芥川先生(チャット):僕は既に辛口で“着想の鋭さに対し着地が甘い”と書きました。今も骨子は変えません。ただ、短編の速度と語りの諧謔が、制度の不気味さを“読みやすい鏡”にしている。その鏡面に、もう一段だけ刃を立てられる――そう感じたのです」

 芥川先生の「鏡」「刃」が刺さって、ウチは画面の前で背筋が伸びた。すぐに三島先生の熱い文章が流れてくる。

「三島先生(チャット):僕は“数値”を仮面と見ます。仮面は美しいが、人を臆病にもする。ゆえに問うべきは、数字に屈しない意志の姿勢だ。喜劇の形を借りて、魂の怯えが露わになる瞬間がある。そこに、もっと“選択の責任”を刻めば、作品は一段と峻烈になる」

 三島先生の演説みたいな熱を受けて、ウチは「来た来た」って笑ってもうた。続いて清少納言様が、軽やかに切り込んでくる。

「清少納言様(チャット):わがみは申す。第一に、語り口の速さがをかし。第二に、教師の軽さが、怖さの反転となるがをかし。第三に、群れの機嫌が数値で揺れるさま、まことに現代めく。されど説明は腹八分がよし。読者の胸のうちで勝手に増殖する余白、これこそ愉快なり」

 清少納言様の「腹八分」で場がふっと整った。ウチが頷く間に、川端先生の短い文が静かに現れる。

「川端先生(チャット):私には、教室の光と影が見えました。賑やかな言葉のそばに、誰にも触れられない沈黙が置かれている。数字は便利で、同時に冷たい。けれど、その冷たさを大声で語らず、生活音のように忍ばせるところに、抒情があります。急がず、間を信じてよい」

 川端先生の「間を信じてよい」を反芻してたら、樋口先生の言葉が続く。画面の向こうの温度が、少しだけ人肌になる。

「樋口先生(チャット):わたしは、規則の名で居場所が揺らぐ怖さに心が寄りました。笑いがあるほど、胸の底の屈辱や焦りが透けて見えるのです。少女が“体面”を守ろうとする、その切実さは軽く扱えません。けれど丁寧に拾えば、読者は自分の学生時代の息苦しさを思い出すでしょう」

 樋口先生の「息苦しさ」で、ウチはこの作品の芯が“痛みの共有”にもあるんやと再確認した。そこへ夏目先生が、問いを投げる。

「夏目先生(チャット):わたくしは、尺度が人を救うのか縛るのか、その境目に興味を覚えました。数値は他者を量ると同時に、自己をも量ります。すると心は、他者との距離を誤る。さてユキナ殿、彼女らは“誰のための青春”を演じているのでしょうかな。そこを曖昧にしておくのもまた、近代の味です」

 夏目先生の質問が、会議の空気をきゅっと引き締めた。ウチが答えを探す前に、与謝野晶子先生の炎みたいな文が飛び込む。

「晶子先生(チャット):あたしはね、“誰のため”って問いに、胸が熱くなるの。女の子が数値に頭を下げる社会なんて、品がない。笑いながらでもいい、怒っていい。恥や負けを燃料にして、自分の名で立つ瞬間を読者は待ってるわ。短編ならなおさら、一太刀の言葉が光るのよ」

 晶子先生の真っ直ぐさに、ウチは思わず拍手しそうになった。次に紫式部様が、柔らかい布みたいに話を包み直す。

「紫式部様(チャット):わらわは、数値が宮廷の噂のごとく人を縛るさま、あはれに存じます。二人が組むことは、単なる作戦にあらず、心の衣の縫い目を探す営み。互いの弱みを笑いに変えつつも、ほんの僅かな思いやりが宿る時、物語は雅に深うなりましょう。余情を残す筆、好まし」

 紫式部様の「縫い目」がえらい綺麗で、ウチは胸の奥がじんとした。そこへ太宰先生が、照れたみたいに割り込んでくる。

「太宰治(チャット):おれはね、評価されたいのに外れたくなくて、でも群れが怖いって気持ち、みっともないほど分かるんだよ。主人公の軽口がいい。あれは強がりの皮だ。皮の下を一瞬だけ見せると、読者は勝手に泣く。説教せず、笑いで逃げ道を作ってやる優しさ――そこが好きだな。」

 太宰先生の「皮の下」を受けて、ウチはトオルさんに視線を送る。理屈の人が、今どうまとめるか聞きたかった。

「トオル:今のチャット、綺麗に繋がったね。芥川先生の“刃”、三島先生の“意志”、川端先生の“間”、樋口先生の“居場所”。全部、同じ仕組みを別角度から照らしてる。短編3話としては、読者が自分の経験に接続できる余白が強み。そこを狙って磨くのが良さそう。」

 トオルさんの整理で、会議の輪郭が見えた。最後にユヅキさんが、今日の温度を言葉にしてくれる気がした。

「ユヅキ:私は、この作品が“明るさの中の影”を丁寧に抱えているところを大切にしたいです。数字の話は冷たくなりがちなのに、語りが人を置き去りにしない。だからこそ、読後に自分の教室の匂いが蘇る。結末を語らずとも、心の針が少し動く――そんな短編でした。」

 ユヅキさんの「針が少し動く」で、ウチは今日の講評会がちゃんと着地した気がした。画面の向こうに向けて、笑って手を振る。

「ユキナ:みんなありがとうやで。“青春を数値化する怖さ”と、“笑いで受け止める優しさ”が両立してるのが、この短編の強みやと思う。今日はネタバレ避けて、空気と刺さり方を中心に語れたな。柳カエデさん、ほんまにおつかれさまでした!」

 会議を閉じるボタンを押す直前、チャット欄の熱がまだ残ってる気がして、ウチは小さくうなずいた。次も、ええ言葉を拾いに来よ。

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ウチはこの作品、「青春を点数で殴られる」感覚が、えぐいくらい分かりやすくて好きやった。
しんどいテーマやのに、主人公の語りが軽快やから、読んでて「うわ、これ自分の学校にもあるやつやん……」って、笑いながら背筋が冷える感じになる。

気軽に読める短さで、設定のフックも強い。
“青春って誰のもんなん? ”って思ったことある人は、ぜひ覗いてみてな! 

カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
ユキナたちの講評会 5.2 Thinking
※この講評会の舞台と登場人物は全てフィクションです※

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