第59話:夜明け前の約束**



---


### **:夜明け前の約束**


『Rolling Wave!!』の希望に満ちた歌声が武道館全体を包み込み、観客の心に深い感動と、拭いきれない**「物悲しい響き」**が残った。

大歓声の中、絵里奈と詩織はステージを降りた。


照明が落ち、暗闇に包まれた会場に、再び地鳴りのようなアンコールが響き渡る。

**「TwinSpark! TwinSpark!」**


二人は、舞台袖で深く息を吐いた。

「すごい…まだ、こんなに」詩織が、震える声で呟く。

「ああ。私たちの歌は、届いたんだ」絵里奈は、静かに頷いた。


**アンコールは、一度、二度、そして三度。**

二人は再びステージに上がり、最後の力を振り絞り、歌を届けた。

(※この三度目のアンコールで、『TwinSpark』の代表曲や、ハルカの鎮魂歌、あるいは「サステナブル・エモーション」がもう一度歌われたと描写を補完する)


三度目のアンコールが終わり、再びステージを降りた二人は、汗と涙でぐっしょりだった。

「絵里奈ちゃん…もう、声が出ないよ…」詩織が、力なく座り込んだ。


**「まあ、ここまでは、ある程度、予定通りね」**

絵里奈は、フッと笑った。

(予定通り…だけど、ここまで、ファンが私たちを求めてくれるなんて…)


しかし、会場の熱狂は、収まる気配がなかった。

**「TwinSpark! TwinSpark!」**

**四度目のアンコールを求める、地鳴りのような声が、武道館を揺るがし続ける。**


絵里奈は、舞台監督やマネージャーの焦る顔を見た。

(このままでは、終電がなくなる。でも、このアンコールを無視して、私たちは本当に去れるのか?)

その時、絵里奈の脳裏に、ハルカの遺書と、詩織が流した涙、そして、自分たちが掴んだ「真実」がフラッシュバックした。


「詩織」

絵里奈は、詩織の手を強く握った。

「私たちが、本当に届けたいものは、何だろう?」


詩織は、絵里奈の目を見つめた。

そして、ゆっくりと、しかし明確に、頷いた。


「…分かった」


二人は、再びステージへ向かった。

照明が点くと、観客は歓声で迎えたが、二人の表情は、いつもと違っていた。


絵里奈が、マイクを握り直した。


「皆さん、本当にありがとうございます。**こんなにも、私たちの歌を求めてくださって、感謝しかありません**」

詩織も、深々と頭を下げた。


「でも…」絵里奈は、一呼吸置いた。

**「いくら、何度アンコールしてくださっても、お別れは来てしまいます」**


会場から、悲鳴のような声が上がる。

「やだー!」

「行かないでー!」


絵里奈は、静かに、しかし力強く続けた。

「皆さんの気持ちは、私たちに届いています。だから、私たちは、皆さんに、もう一つだけ、最後のわがままを聞いてほしいんです」


詩織が、マイクを受け取った。その声は、震えていたが、温かかった。

「これから、もうすぐ新年です。**もう終電はなくなって、始発まで時間がありますよね?**」


観客が、ざわめく。


「だから…」絵里奈が、詩織と顔を見合わせた。


**「午前3時45分まで、武道館のロビーで、私たち二人で、皆さんとの握手会とサイン会を開催したいと思います! いかがでしょうか!?」**


その言葉に、会場は一瞬の沈黙の後、割れんばかりの、地鳴りのような歓声で爆発した。

「うおおおおおおお!!!」

「マジかよー!!」

「最高だー!!」


絵里奈は、マイクを詩織に渡した。

詩織は、涙を拭いながら、満面の笑顔で叫んだ。


**「私たち二人に、ありがとう、さようならを言って、どうか、気をつけてお帰りください!」**


舞台袖の小百合は、その光景を呆然と見つめていた。

彼女が計画した「ラストライブ」の予定は、完全に崩れ去った。

アイドルが、終電後の深夜に、ファンと直接触れ合うなど、事務所の管理を完全に逸脱している。


しかし、彼女は、もはや何もできなかった。

二人は、自らの歌声で、真実を告発し、そして最後に、**「アイドル」という枠を完全に破壊した**のだ。


武道館の裏側では、スタッフが慌ただしく握手会の準備を始める。

絵里奈と詩織は、ファンとの最後の交流のために、ステージを後にした。

この夜、彼女たちは、江藤小百合の支配から完全に解放され、自分たちの手で、**「真のサステナブル・スパーク」**を、ファンの心に永遠に刻み込んだのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『サスティナブルEmotion』 志乃原七海 @09093495732p

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る