第56話:中盤の告白と、届かぬ夢
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### **第37話:中盤の告白と、届かぬ夢**
武道館は、絵里奈と詩織の歌声と、観客の地鳴りのような歓声で熱狂の渦と化していた。
『Future in the Sky』を歌い終え、会場のボルテージは最高潮に達していた。
二人は、スポットライトを浴びながら、ステージ中央に立つ。
絵里奈がマイクを握り、ゆっくりと話し始めた。
「…皆さん、本当にありがとうございます。こんなにたくさんの方が、私たちのために集まってくださって…」
詩織は、感極まって、涙で言葉が詰まる。
「私…私たち、本当に…」
絵里奈は、詩織の肩をそっと抱き寄せた。
「…皆さん」
絵里奈は、真剣な眼差しで、観客一人一人を見つめた。
**「皆さん…知ってますか?」**
その言葉に、会場のざわめきが収まる。
「私たち、『TwinSpark』は…」
絵里奈は、一呼吸置き、詩織と顔を見合わせた。
**「…実は、3人組だったんです」**
その瞬間、会場から「え?」という驚きの声が漏れる。
しかし、コアなファンや、メディアで騒動を知っていた観客からは、力強い声が響いた。
**「しってるよー!!」**
**「ハルカだろー!!」**
**「忘れてないぞー!!」**
その声に、詩織は思わず吹き出した。
「あはははは! **ありがとうございます! ファンの皆様の記憶力に感謝いたします!**」
詩織の明るい声が、会場の緊張を和ませた。
絵里奈も、少しだけ口元を緩める。
「ええ。そうなんです」
絵里奈は、再び真剣な表情に戻った。
「ここに立つはずだった、もう一人のメンバーがいます。沢尻ハルカ」
スクリーンに、生前のハルカの、あの金髪で傲慢な、しかし輝いていた笑顔が映し出される。
「彼女は、才能に溢れ、誰よりも音楽を愛していました。ですが…**あまりにも若くして、この世を去ってしまいました**」
会場が、静まり返る。
それは、悲しみと、そして、報道が伝えきれなかった「何か」への、戸惑いの沈黙だった。
絵里奈は、ハルカの遺書を胸に抱くように、マイクを握りしめた。
「今夜は、そんな彼女への追悼として。そして、彼女が本当に歌いたかった歌を、皆さんに届けたいと思います」
「彼女のソロナンバーです。聴いてください。**『Endless Dream』**」
イントロが流れる。
それは、絵里奈の繊細で、どこか憂いを帯びたボーカルワークが最大限に活かされた、メロディアスなバラードだった。
**(歌詞の想定)**
* *"終わらない夢の中で あなたを想い続ける"*
* *"この胸の痛みさえも 愛おしいと呼べたなら"*
* *"たとえ道が途切れても 私はあなたを待つでしょう"*
絵里奈の歌声は、表面上は「切ない恋心を歌ったラブラブナンバー」として、美しく武道館に響き渡る。
しかし、その歌声の裏には、ハルカへの鎮魂、そして小百合の支配という「終わらない悪夢(Endless Dream)」の中での、失われた自己への渇望が込められていた。
詩織は、絵里奈の歌声に寄り添うように、静かにハーモニーを重ねた。
二人の歌声は、美しく武道館に響き渡る。
その歌の真の意味を理解する者は、まだほとんどいない。
だが、そのメロディと歌声が、観客の心に、深い感動と、拭いきれない**「物悲しい響き」**を残していった。
舞台袖の江藤小百合は、モニターに映る絵里奈の顔を、憎々しげに睨みつけていた。
(あの歌…!私の仕掛けた「 Endless Dream」を、こんな形で歌い上げるとは…!)
彼女の計画は、もはや制御不能になっていた。
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