父の仕事を私は知らない

Yukl.ta

「父の仕事を私は知らない」

私は父の仕事を知らない。

父に聞いても答えてくれる事はなく、15歳になった今でも知らないままだ。


父と不仲というわけではない。普通に話もする。

父は、よく私に「立派な大人になるんだぞ」と口にする。それが私は嫌ではない。


母もそうだ。今日も遅くなる父の帰宅を待ちながら、甲斐甲斐しく食事の支度をしている。家族想いの良い母だと思う。



ある日、母に父の仕事について尋ねたことがある。

私のその疑問に母は、「とっても素敵な仕事よ。あなたもいつかお父さんみたいな立派な大人になってね」と笑顔で曖昧にそう口にするだけだった。



私は父の仕事を知らない。

しかし、父の趣味は知っている。


父の趣味は音楽鑑賞だ。

帰宅後の父は自室に籠り、ヘッドホンを耳に当てて音楽を聴く。

その時の父は、身体を安楽椅子に預けて瞑目し、ある種の恍惚とした表情を浮かべていた。


きっと、父はとても重要な仕事を任されていて、音楽に耳を傾けるこの瞬間だけが安息の時なのだろう。


そう理解した私は、立派な父を誇りに感じ、両親の期待に応えたいと思っていた。


…ある日までは。



ある日、父の不在時に、私はこっそりと父が愛聴している音楽を聴いてみた。


「?」


しかしヘッドホンから再生されたのは音楽ではなく、が延々と流れ続けているだけだった。



18歳になった。

父も母も変わらず私に優しい。

しかしこの家には私の知らない闇がある。

高校を卒業したら私は必ず家を出る。

私は両親の期待には応えない。

父の仕事。そんなものは知らないままでいい。

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父の仕事を私は知らない Yukl.ta @kakuyukiyomu

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