かなわぬお方にこいをした

この、哀しい恋の物語を語るに、
まずは鳥御門の事を軽く解説した方が良さそうですな。


彼ら……いや、彼女ら、と呼ぶべきでしょうか。
それは人間の姿を持ちながら羽を持ち、
出産ではなく産卵をいたします。

赤子ほどの卵を産むのです。

そして、その卵は万病に効くと言われており、大変貴重とされております。

そして、卵から雄が生まれることは決してなく、ではどうするかというと、
人間の男性から「つがい」を選び、卵を食わせて鳥御門にすると言うことなのです。


恋愛結婚は許されませんが、主人公の鳥御門、とある男性に恋をしてしまいました。

しかし、男性にはすでに婚約者がおり、病に伏せっておりました。


鳥御門は男性に向けて言います。

「あなたに万病に効く鳥御門の卵を与える代わりに、私の婿になってほしい」


それは、いわば恋人の命を人質に取った……などといえば悪い言葉になりますが、
人間の命を秤にかけさせる決断でした。


男は、鳥御門との婚約を決めるのでした……



……・



………が、

この恋は悲恋に終わります。最後は、みようによっては美しい景色ですが、
残酷な景色にもございます。


誰かの幸福は、誰かの不幸である、

揺れる天秤のような理を、美しい描写で描いた本作。


ご一読を。


















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