聖夜に消えた「理想の家庭」。ゴミ箱に捨てられた、あまりに切実な願い。
- ★★★ Excellent!!!
世界が祝福に包まれるクリスマスの夜。 温かな食卓、七面鳥の香り、そしてサンタを待つ幼い少年の輝く瞳。
そんな「幸福な光景」のすべてが、一枚のビニールシートと一本のロープによって無慈悲に反転させられます。
本作の真の恐ろしさは、父親が抱く「理想の家庭」への執着にあります。
自分を否定せず、自分の描く形に従うだけの出来損ないではない家族を求める狂気。
その身勝手な欲望のために、実の子を欠陥品と切り捨て、母親を恐怖で支配する姿は、どんな怪異よりも恐ろしいものです。
「やさしいおとうさんとおかあさんをください」
聖夜の静寂の中で、少年の祈りは天に届いたのでしょうか。
届いた故の、結末なのかも。
読み終えた後、暗い窓の外を見つめずにはいられない、衝撃のダークホラー短編です。