恋も引力も、質量には勝てない。天才が「豚死」するまで。
- ★★★ Excellent!!!
物理学の歴史を、これほどまでに「胃もたれ(失礼...)」するようなユーモアで描き直した作品があったでしょうか。
物語は、誰もが知るアイザック・ニュートンのドッペルゲンガーを主人公に、万有引力の法則を「異性を惹きつける力」として再定義するところから始まります。冒頭の理路整然とした物理講義に「お、本格SFか?」と襟を正すと、次の瞬間には「質量=太った女性(ボンヌ)」という身も蓋もない現実の重力に引きずり込まれます。
気づくと作者さまの圧倒的な言葉遊びのなか。
微分・積分は、墓標に刻む「美文・惜文」。
アイザック・ニュートンは、愛に挫け豚になる「愛挫苦・入豚」。
デカルト主義やライプニッツとの対立、さらにはダーウィンの進化論(退化論)までを網羅する構成は、確かな教養に裏打ちされた「遊び心」を感じさせます。
「近いものを引きつけ、去る者は追えない」という数式の真理が、これほど切なく、そして滑稽に響く物語は他にありません。
読み終えた後、あなたの体重計の数値がいつもより重く感じる……それはきっと、この物語が持つ強烈な『万有引力』のせいかもしれません。