五感を揺さぶる怪談。実在のトンネルを舞台にした、最恐。
- ★★★ Excellent!!!
爽やかな夏のドライブ。
窓から入り込む森の空気、カーステレオから流れる軽快な音楽。
そんな親友同士のありふれた日常が、一つのトンネルを境に悪夢へと変貌します。
本作の魅力は、じわじわと迫りくる違和感の描写です。 二キロ足らずのトンネルが、走っても走っても終わらない。
正体不明の「二つ頭の獣」。百キロを超える加速で逃げる車内の緊迫感。
そして、ようやく辿り着いた「出口」の先に待っていたのは、八月の太陽ではなく、音のない銀世界。
「きさらぎ駅」という有名なモチーフを使いながら、ラストに提示される「異形たちが踊る駅」のビジュアルは、既存の怪談を超えたおぞましさを放っています。
読後、トンネルに入るのが少し怖くなる。 そんな、皮膚にまとわりつくような冷たさを持った傑作ホラーを、ぜひ。