「想い」を削り出す、冷徹で孤独な研磨師の記録。

本作が描くのは魔女狩りそのものではなく、それが「日常業務」として成立してしまった世界の冷たさでした。

拾い、削り、売る――。
その淡々とした手順が、人間の残酷さを何倍にも増幅させています。
心臓が色で分類される描写が圧巻でした。
欲望の黄色、誇りの深紅、そして無色透明。
とりわけ最後の「色のない結晶」は、怨みも呪いも結晶化することすら許されなかった存在を突きつけてきます。

語り手は善人ではありませんが、その透明な石を商品にしなかった瞬間、この物語は単なる残酷譚ではなく、人間の中にまだ残っている燃え残りを描く文学へと変わったように感じました。
派手な救いはありません。
読後に胸に残る冷たい重みこそが、この作品の真価です。

この世界を見せてくださってありがとうございます。