外に出れば消えてしまう女、そして夢の中で眠り続ける男。

幻想的な本作が描いているのは、単なるホラーでも、官能でもありません。

「愛されるために形作られた存在」が、愛の終わりをどう受け止めるか――
その過程が、驚くほど丁寧に、そして残酷なまでに誠実に描かれています。

自分は彼に望まれて生まれた存在であり、重くなり、飽きられ、
捨てられていくことさえ理解している。
それでもなお、彼を手放せない心の揺らぎが、
独白の一つひとつに静かに滲んでいます。

優しさとは何か、愛とは何か、そして「存在する意味」とは何かを、
読者の胸の奥にそっと沈めてくる作品です。
忘れられたはずの夢の女が、確かにそこにいたと、
なぜか分かってしまう、そんな余韻を持つ一編でした。

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