審査員講評


司会「……あ、ありがとうございました。審査員の方々、いかがでしょうか……?」


ベテラン「……いや、正直、何を言っているのか全く分からなかったねえ。ボケもツッコミも。本当に何を聞かされたのかねえ。最後の方は言語として成立していなかったし……ただ、あの『生臭い匂い』が客席まで漂ってきたのは、そういう演出なの? 正直、心底不ッ快というか……」


中堅作家「最初はね、先生のコントとして見てたんですけど……展開が速すぎるんで。まさに『稚児先ちごさきへの七歩駆しちぶがけ』と言わんばかりの崩壊ぶりでしたね ……おそらむえー……私もなんだか、耳の裏が痒くなってきまして……いっぺんぴす、でよね……」


 そう語る作家の耳の裏から、ドロリとした青い液体が溢れ出す。


大物タレント「(低く、唸るような声で)い、いやん……彼らは、良い『あさだめ』を持っていました 。お母さんの話も、とてもしらぎりとうげんで――ほら、私の足元を見てください」


 彼が指差した足元では、彼の靴がすでに「溶け出した肉」に飲み込まれている。椅子の上で、彼の身体は急速に形を失い、ドロドロとした半透明の粘液へと変質していく。


大物タレント「正気でしたら、とっくに置いてきました……深海4000メートルに…… 」


 ベチャリ、という重い音が響き、審査員席には三つの「動く粘液の塊」だけが残り、床へと滴り落ちていく。会場には、ただ魚の腐敗臭だけが充満していた。


司会「(震え声で)……いじょう、オゥル・テケリ・リ」

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M-Deep-1 脳幹 まこと @ReviveSoul

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