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集中している時こそ周りを見る


 うっかりしていた。
 うっかり、脇目も振らずに作業に没頭してしまった。

 気付いたときには手遅れで、今日もまたこんな時間になってしまった。

 みなさんも、集中している時に時間の進みが早いという現象を体験したことがお有りだろう。

 経験則としては何となく把握しているが、その原理まで知っている方はそこまで多くない。

 何を隠そう――「時間泥棒」による暗躍だ。

 時間泥棒は、体長200〜400nm程度の微小な生命体である。生物学上ではウイルスに該当する。
 普段は非活性状態なのだが、寄生主が集中状態になった兆候(脳の特定部位の活発化)を検知すると、活性化する。
 そして、ひっそりと寄生主の脳から余剰エネルギーを拝借するのだ。

 この余剰エネルギーがいわば記憶の帯の切れ端とも言うべきもので、これを奪われることで、人はどことなく時間の進みが早い気がすると悩むのである。

 対策は一定期間ごとに集中を意識的に解くことだ。時間泥棒が活性化してから脳の情報を奪うのにはある程度猶予がある。

 集中していると、周りの行為に目がいかなくなる。
 こっそりと頭の上に糸くずを置かれるイタズラがあったが、そういうことにも気付けない。

 とはいえ「そんくらいくれてやる!」と意気込めるほどの集中すべきタスクがある人には、羨ましさを覚えるのだが……
 

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