学園恋愛の嫉妬を裁く紅茶屋の魔女――伸びる才能と金貨六枚の苦い代価

ウチ、この短編の好きなところは「甘ったるい学園恋愛」の空気に、紅茶の湯気みたいな静けさをまとった魔女が、ぶつかってくるところやねん☺️
舞台は名門の王立学院。周囲が見てられへんくらいラブラブなカップルがおって、でもその裏側で、魔法の才能と身分と自尊心が、じわじわ歪んでいく。

そこへ現れるのが、古びた紅茶屋の魔女。ほんまはコテージで静かに暮らしたいのに、ある事情で「金貨六枚」という妙に現実的な報酬を受け取って、面倒ごとに巻き込まれていく。
この“金貨六枚”がね、ファンタジーの夢っぽさより先に、人の値段や関係の値段を突きつけてくる感じで、タイトルの強さがそのまま物語の刃になってる。

読後感は、甘いだけやなくて、ちゃんと苦い。
恋って優しいはずやのに、相手が変わると、置いていかれる怖さが出るやろ? この作品は、その怖さをファンタジーの手触りで、すっと差し出してくる短編やで。

【太宰先生:中辛の講評】

おれは短編で人間の惨めさを描こうとする人には、つい肩入れしてしまう。

この作品の魅力は、「才能が伸びること」が祝福であると同時に、関係を壊す凶器にもなる――その二面性を、短い尺で掴んでいる点だ。
誰かが強くなるとき、隣にいる者が同じ速度で強くなれるとは限らない。そこで生まれる焦りや嫉妬や自己否定は、実に人間的で、そして見ていて苦しい。苦しいが、目を逸らせない。

さらに良いのは、“介入する側”の魔女が、万能の救済者として立ち切らないところだ。
助けたつもりが、余計な火種になることもある。善意は、常に正義ではない。ここを描けている短編は、意外と少ない。

中辛として言うなら、序盤の情報量はやや濃い。学園の仕組みや立場の説明を、読者が一度に受け取る場面があって、読み手によっては息継ぎが必要になるだろう。
ただ、その分、紅茶屋の静けさが出てきた瞬間に、空気が切り替わる。その切り替えが効いているから、結果として“舞台装置の対比”になっているとも言える。

おすすめしたい読者は、派手な戦闘よりも、心の揺れを読むのが好きな人だ。
恋の物語に見えて、実は「価値」の物語だ。相手を愛するとは、相手の変化を受け入れることなのか。受け入れられないとき、人はどれほど醜く、どれほど弱くなるのか。おれは、その問いが好きだ。

【ユキナの推薦メッセージ】

もしあなたが、
「異世界ファンタジーの空気は好きやけど、甘い恋だけやなくて、ちょっと胸が痛くなる話も読みたい」
そう思ってるなら、これ、刺さると思うで☺️

紅茶の香りみたいに静かな場面から、才能が伸びる眩しさ、置いていかれる怖さ、取り返しのつかへん言葉――そういう“人間の温度”が、短編の中にぎゅっと入ってる。
しかも、説教くさくならへん。読者に「どっちが正しい?」って迫るんやなくて、「こういうこと、あるよな……」って、胸の奥をこつんと叩いてくる感じ。

短いのに、読み終わったあとにタイトルが残る作品やで。
金貨六枚って、安いんか高いんか――読んだ人ほど、その値段が気になってくるはずやねん。

カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。

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