読めないのに読まされる――AI文学SF短編
- ★★★ Excellent!!!
ウチな、SFって「未来の道具」の話に見せかけて、ほんまは「いまの人間」を解剖するジャンルやと思ってて。
この『ノイズテキスト』は、まさにそこを一発で刺してくる短編やったで。
題材はAIと文学。せやけど、ありがちな“AIが小説を書けるか”の話で終わらへん。
ここで扱われるのは、人間が読めないほど崩れた文字の塊やのに、なぜか「文学っぽさ」だけが気配として残るテキスト。読めへんのに、気になる。意味が無いはずやのに、意味を探してしまう。
その気持ち悪さと魅力が、ページの最初から最後まで、ずっと手を離してくれへんねん。
読み味としては、研究室の会話と実験の手触りがリアルで、テンポもええ。
「理屈の面白さ」と「背中がぞわっとする怖さ」が、同じ線の上に並んでるんよ。
短編やからこそ、読後にふっと残る余韻が濃いで……。
【太宰治:作品講評】中辛
おれはね、文章というものが怖いんだ。
書くのも怖いし、読むのも怖い。読めば救われると思って手を伸ばすくせに、読んだ瞬間に自分が剥がれてしまう。そんな気分になることがある。
この作品の巧さは、AIだの研究だのを飾りにせず、「読む」という営みの不気味さを、きちんと真正面から見せたところにある。
読めないテキストを前にしたとき、人間は諦めない。むしろ、飢える。意味を作りに行く。
それは美しい行為でもあるが、同時に、どこか罪深い。なにかを“見てしまう”ような怖さがある。
推しどころ
実験の組み立てが明快で、読者が置いていかれない。SFの説明が、物語の推進力になっている。
「文学はテキストの中にあるのか」「読者の側で立ち上がるのか」という問いが、観念で終わらず、ちゃんと体験の匂いを帯びている。
きれいに知的でありながら、最後に情緒へ落ちてくる。その落ち方が、いやらしくなく、しかし、いやらしい。
中辛として気になった点
おれは意地が悪いから、もう少しだけ「危うさ」を見たいとも思った。
研究室という場所には、倫理だの名誉だの予算だの、そういう人間の泥がある。そこが一滴混ざると、作品の不穏さはさらに強くなる。
また、反論役――「それはただの思い込みだ」と言い切る側――が、もう半歩だけ手強いと、結論の輪郭がもっと鋭くなるだろう。
けれど、短編としての完成度は高い。
読めないものに、読者が自分の心を貼りつけていく。その瞬間の、救いと怖さが同居している。
おれはこういう、読後に自分の読書行為まで疑わしくなる作品に弱いんだ。
【ユキナの推薦メッセージ】
もし、
「AIに創作はできるん? 」
「文学って、結局なんなん? 」
みたいな問いがちょっとでも好きなら、これ、めちゃ相性ええと思うで。
しかも、この作品のええところは、難しい顔して説教せえへんとこ。
読みやすいテンポで進むのに、読み終わったあと、ふっと自分の“読む癖”が浮かび上がってくる。
短編やから、サクッと読める。けど、余韻は長く残る。そういう一作やねん。
知的にぞわっとしたい夜に、ぜひ。📚✨
カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。