第2話 生徒会長選挙
そんなたわいのない日常が繰り返されて行った高校二年生の初秋。いつものように新聞部の部室で次号のレイアウトを組んでいたら、紅さんがとんでもない事を言いだした。
「今度の生徒会長選挙、立候補者届け出しといたから」
「え! 紅さん生徒会長選に立候補するの!?」
彼女の突然の発言に僕は驚いた。
「なんで私がそんな面倒くさい事するのよ! 菅野ッチに決まってるでしょ」
更に二度目のびっくりだ。もちろん事前に何の相談も無かった。
「ええっ!! なんで勝手にそんな事するんだよ。新聞部はどうするんだよ僕と君しかいないのに……あ、どうせ当選するわけないか……いや、それでも演説会とか色々あるじゃんか。すぐに先生に言って取り下げてこよう」
そう言って部室を出て行こうとした僕に紅さんは後ろから声をかけてきた。
「あ、選挙管理担当は先生じゃなくて今の生徒会だからね。新聞部部長のくせにそんな事も知らないんだ。……でもなんだよ、色々と偉そうなこと言ってたのに自分じゃやる気ないんじゃん。菅野ッチも結局どこかの大人と一緒だね」
紅さんにそう言われると、流石に普段温厚な僕もカチンとくる。
「なんで人の為に何かをする必要があるんだって、この間紅さんも言ってたじゃないか」
「それは私の話。菅野ッチは違うんでしょ? それともやっぱり私と一緒でその他大勢なのかな?」
生徒会なんかやって何の得があるんだよと言いかけて、それっていつもイラついていた若い連中や大人たちと一緒だなと思い、僕は言葉を飲み込んだ。
「スマホの校内持ち込みを解禁してくれるんでしょ? 前に言ってたの忘れてないからね。証拠動画も残ってるんだから」
そう言えば前にそんな事を強く主張していたようにも思う。何も行動を起こさないのであれば確かに口だけ大臣だ。
「でもこう見えて僕は友達とかいないし、立候補者には応援演説をしてくれる人が必要じゃないか……」
そう、我が校では生徒会に立候補する人間は、演説会での本人の演説の他に応援してくれる人の演説も必須だった。そんな面倒くさい事を引き受けてくれるほどの親しい友人に、僕は全く心当たりが無かった。
「こう見えてって……そうだろうなとは思ってるけどさ、応援なんて私がするに決まってるじゃん。心配いらないよ」
確かに彼女は見た目に似合わずしっかりとした文章を書く人だった。伊達に新聞部に二年間も所属していないという事か……。にしてもかなり面倒くさい話だとも思うのだけど、一体どういう風の吹き回しなんだろうか?
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紅海月(べにくらげ) 十三岡繁 @t-architect
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