謎の母子手帳。川に流される人形。不可解な子供。一体……何が起きている?

 ホラーだけじゃなく、ミステリーが好きな方にも是非読んでいただきたい作品です。

 物語は「一冊の母子手帳」から始まります。
 大学生の永和が受け取った小包には、なぜか母子手帳が入っていた。本来はフリマアプリで子供用の服を注文したはずなのに、入れ間違いなのか母子手帳が送られたという。
 姉である美和が「湊」という子供を産んで幸せいっぱいな状況のはずが、それから永和の周りで奇妙な出来事が起こり始める。
 「川に人形を流す」と言い出す奇妙な老婆。そして、ビデオカメラに映りこむ見知らぬ子どもの姿。

 不思議に思って母子手帳を紐解くも、「子供は38週目で出産」とあるはずなのに、「妊娠期間は16週」で止まっている。
 だったら、引き算される「22週間」は、胎児はどこで育ったというのか……。

 本作のポイントは、「なぜこの一家が事件に巻き込まれるようになったのか」と、様々な因果関係が紐解かれていく点にあります。
 いわゆる怪異としての、「人形を川に流す儀式の意味」など、呪術的な側面。その他にも、姉の美和の精神が不安定になっている理由、義兄の湊太の素行、そして、「なぜ母子手帳に書かれている赤ん坊の名前と、姪の名前が同じなのか」などなど。

 それらは偶然でもなく、もちろんただのホラー的事象で終わるものでもない。
 数々の事実が紐解かれていき、最後に一個の形に繋がっていく。ミステリーとしても完成度が高く、ラストで全てが解明されるカタルシスをしっかりと味わわせてくれるのが魅力でした。

 ホラーとしてのじわじわと日常を侵食する恐怖、そしてミステリーとして点と点が線で繋がっていく緊張感。様々な面白さを提供してくれる、とても素敵な作品でした。

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