姪っ子のために子供服をネットで注文したところ、
届いたのは母子手帳だった。
このような不条理からこの物語は始まります。
しかも母子手帳には姪の名前がしっかりと書かれているため、誤配送にしても悪意めいたものを感じる。
外に出たら出たで見知らぬ老婆に姪の『名前』を呼ばれる。
そして、桂川に定期的に流されてくる人形や、子供服の意味するところは……?
本作のジャンルはモキュメンタリーホラー。
だので話の輪郭を少しずつなぞっていく形になり、
読者は不可解さに恐怖と混乱を覚えるわけですが、それにとどまらないのが本作の恐ろしいところです。
というのも、よくある『とっ散らかったモキュメンタリーホラー』ではなく、
ちゃんとストーリーテリングしてるんですね。
だから『ちゃんと』怖いし、説得力がある。
一度こういうのをやってみたかった身としては、これがどのくらい困難なことなのか理解しているつもりなのですが、
本当に難しいんです。
いかに読者を惑わすか? どの順番で情報を出せばいいか?
きっと頭を悩ませたはずです。
ただのモキュメンタリーと思うなかれ。
憎しみ、悲しみ、恨み、未練、
怪談話に必要な要素全て備わってます。
ご一読を。
これはモキュメンタリー形式のホラーです。
まず最初に、母子手帳が届きます。当然それは何かの間違いかと思ったのですが……。
たまに見かける老婆のような女性。川に流される人形。奇怪な母子手帳。ひとつひとつは取るに足らないささやかな日常の奇異かもしれません。が、やがてそれらがだんだんと一つの大きな禁忌に繋がってゆきます。母と子なら二人、妊婦なら一人。この設定が怖い。
人の中から人が生まれてくる。改めて考えてみると凄いことですが、生命の誕生にはそれこそがふさわしい。その神秘、その奇跡。だが、それを逆手にとって怪異と恐怖に紐づけたセンスは素晴らしい。また、モキュメンタリーという難しい形式にもかかわらず、迫る恐怖の足音をテンポ良く描いた手腕も瞠目に値します。
これぞまさに、今の時代のホラーでしょう。
ホラーだけじゃなく、ミステリーが好きな方にも是非読んでいただきたい作品です。
物語は「一冊の母子手帳」から始まります。
大学生の永和が受け取った小包には、なぜか母子手帳が入っていた。本来はフリマアプリで子供用の服を注文したはずなのに、入れ間違いなのか母子手帳が送られたという。
姉である美和が「湊」という子供を産んで幸せいっぱいな状況のはずが、それから永和の周りで奇妙な出来事が起こり始める。
「川に人形を流す」と言い出す奇妙な老婆。そして、ビデオカメラに映りこむ見知らぬ子どもの姿。
不思議に思って母子手帳を紐解くも、「子供は38週目で出産」とあるはずなのに、「妊娠期間は16週」で止まっている。
だったら、引き算される「22週間」は、胎児はどこで育ったというのか……。
本作のポイントは、「なぜこの一家が事件に巻き込まれるようになったのか」と、様々な因果関係が紐解かれていく点にあります。
いわゆる怪異としての、「人形を川に流す儀式の意味」など、呪術的な側面。その他にも、姉の美和の精神が不安定になっている理由、義兄の湊太の素行、そして、「なぜ母子手帳に書かれている赤ん坊の名前と、姪の名前が同じなのか」などなど。
それらは偶然でもなく、もちろんただのホラー的事象で終わるものでもない。
数々の事実が紐解かれていき、最後に一個の形に繋がっていく。ミステリーとしても完成度が高く、ラストで全てが解明されるカタルシスをしっかりと味わわせてくれるのが魅力でした。
ホラーとしてのじわじわと日常を侵食する恐怖、そしてミステリーとして点と点が線で繋がっていく緊張感。様々な面白さを提供してくれる、とても素敵な作品でした。
フリマアプリで姪の服を買ったはずなのに、届いたのは一冊の母子手帳。
そこには、姪の名前が書かれていた――ただし保護者欄は空白のまま。
主人公の永和は「誤配送だろう」と思いながらも、その手帳が示す内容が少しずつ“現実の常識”から外れていくことに気づきます。
この作品の怖さは、リアルな生活が舞台になっているところ。
メール、Q&A、ブログ、取引画面、映像記録、不審者情報など、いくつもの形式で断片が積み上がっていき、じわじわと何かに辿り着くような感じ。
主人公も読者も、確信の手前で何度も足を止めさせられつつ、次の記録を見た瞬間に「いや、待って……これは……?」と引きずり込まれてしまう。
その焦りと恐怖が、物語の推進力になっています。
これは怪談というより、生活に溶け込んだ「呪詛」の物語なのかもしれません。
読み始めた時点で、もう当事者です。
一緒に、取り返しのつかない場所まで行きましょう。
フリマで購入した商品の代わりに届いた「母子手帳」。そこには姪の名前が記されているのに、保護者欄は空白。姉はちゃんと別の母子手帳を持っているのに、なぜ?
不気味なのはそれだけじゃない。川辺で人形を抱えた奇妙な老婆が主人公を付け回し、なぜか姪の名前を知っている。そして母子手帳の中では、妊娠の記録が消えていくのに「胎児」だけが成長を続けている——
メール、ブログ、目撃証言。複数の視点から徐々に明らかになる不穏な真相。日常に潜む恐怖を、淡々とした筆致で描くホラー作品です。「死者蘇生の儀式」とは? 一体何が生まれようとしているのか?
山崎永和の元に届いたのは、見覚えのない母子手帳だった。
フリマで間違って届いた母子手帳には、奇妙な特徴があった。
永和の「姪の氏名」が書かれているのに、「姉の母子手帳ではない」のである。
>>●●になれる喜びに、心が震えます。
その日を境に、永和たちの下に不可思議な現象が起こり始める。
日本人形を抱えた老婆がまとわりつき、川岸に人形類が流れ着き始めたのである。
>>ありがとうございます。ありがとうございます。
不審に思った永和が例の母子手帳を読み返し、彼女は恐ろしい事実を目の当たりにする。
知らないうちに母子手帳が日々、▓▓されていくのだ。
>>●●のために。●●のために。それが私のすべて。
ふと、永和のスマホが何かを捉えた。
▓▓が姪っ子のすぐ隣に映り込んでいる。
「……こんな子知らない、なに、なんで映ってるの?」
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おめでとうございます。
元気な『絶望』が生まれました。