第45話「フタ」
エルの母親イント・ボガードの持つ『強過ぎる右腕』。
その呪いを解くことが、エルのメガネの呪いを解くことに繋がる。
そしてそれに挑むのは、呪われた『見え過ぎる目』を持つ我らがギルマス、ロジン・バッグ!
というのがこれからの展開ですね。端的に言えば。
分かりやすくて良いですが、三者三様とは言え呪い持ちしかいませんね……。
「全力を尽くして挑むつもりですが、実際にどうすれば呪いを返す事が出来るのかは分からないんですよね?」
そんな事が可能なのかと問うたロジンに、イントは確かに「分かりません」と答えていました。
「どうすれば、は分かりますよ。本当に出来るのかどうかが分からないだけで。未体験ですから」
確かにそうです。可能なのか、に対してのお返事ですものね。
「主人から二十五年前に聞いた方法は、
「同じ宝箱を……閉じる……!」
ロジンが息を呑んでいますが、冷静に考えると確かに結構厳しいです。
挙げればキリがないですが、厳しい理由のひとつは、どこにあるか分からないことです。なんと言っても毎月ダンジョンの様子は変遷してしまいますから。
もうひとつ上げるとすれば、サークルエイジ越えだろうイントおばちゃんを連れて深層をフラフラ探し回ること。
さらに、これが最も厳しい点だと思いますが、ロジンの目はダンジョン内でロクに使えないこと。
本人は『脳が焼け切れそうな痛み』とまで言っていましたから。
この三つの問題をクリアする何かがなければ、私には正直難しい様に思います。ロジンは何か算段があって頷いたんでしょうか?
私が色々と考えていた間、どうやらロジンも色々と考えていた様です。
「いくつかお聞きして良いですか?」
「もちろんです」
「本人以外の誰かが閉じても意味がないんでしょうか?」
「そう聞いています。というか、開いた本人にしか閉じられないそうです」
「お父様──バクゥさんはお一人で潜られたと聞いていますが、お母様をなぜ連れて行かなかったのでしょう?」
「まずは宝箱を見つける、その後地上に戻り、私を連れて再び宝箱へ向かう、あの人の予定ではそうだったんですが……」
ダンジョン変遷に間に合う様にイントを連れて再び潜る、そういうつもりだったという事ですか。
当時エルもまだ十ほどですものね、可能かどうかはともかく妥当なところでしょうか。
なるほど、と小さく呟いたロジンは顎に手をやり腕を組んでしばし黙考。
そして自分の考えを確認する様に、ゆっくりと口を開きました。
「バクゥさんはずいぶんとダンジョンにお詳しい様ですが、どの様な方だったんですか?」
「さぁ? 変わった人だったのは間違いありませんけど、出身も何も知りません。ひとつ言えるのは……」
ひとつ言えるのは……?
「彫りの深い男前だったのは間違いありません」
……あんまり役に立ちそうにない情報でした。
ポッと頬を染めてそう言ったイントが意外に可憐な女性だというのは伝わりましたけど。
とりあえずバクゥ氏と同じようにロジンが宝箱を見つける、地上に戻ってイントを連れて戻る、この方向性だけは決定でしょうか。
「現実的に言って僕がソロで潜ってどうにかなるとは思えませんが、同行者には
そうですね。頼りになるのがじきに顔を見せると思います。他にも大きな問題が残ってはいますが、とりあえずパーティメンバーには困りませんね。
準備が整い次第アタックするとロジンが告げ、エルの母イントとの初顔合わせは終了です。
予想外の展開ではありましたが、当のロジンは満足そうです。母親公認がチラついていますからね。
イントを見送りに一階ホールへ向かう途中、イントが階段の手摺りを握った途端にへし折れてしまったのには驚きましたが……
「お、お気になさらず。この海猫亭は不思議な建物なので、
一日か二日貰えれば元通りです。そんじょそこらの建物とは格が違いますからね、私って。
『簡単に安請け合いして大丈夫なんですか? 貴方、ダンジョンに潜れないでしょう?』
それこそ最も大きな問題です。
一体どうするつもりなんでしょうねロジンは。
「前々から考えてはいたし準備も訓練もしてたんだよ」
そう言ったロジンは私室に引っ込みすぐに戻ってきました。
『なんですそれ?』
「秘密兵器さ」
両手にひとつずつ、小ぶりな箱がその手の中に。
なんでしょうねそれ?
ようこそギルド海猫亭へ 〜アラフォー手前の受付嬢エル・ボガードは、歳下ギルマスの求愛を拒むのか、拒まないのか〜 ハマハマ @hamahamanji
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