戦場で少女が奏でるのは死の調べか、慈悲の響きか
- ★★★ Excellent!!!
舞台はとある王国の城郭都市。
そこで暮らす少女エーカは「戦争中の帝国の血を引いているから」という理由で不当な扱いを受けるようになっていた。
それでも笑顔は失わないのは親友のルチアと一緒にいてくれる母親──そして「音楽」への憧れのおかげ。
しかしその笑顔も日に日に増す戦争の気配によって曇っていき、やがて戦禍は容赦なくエーカから大切なものを奪っていく……。
そんな展開から広がっていく本作ですが、ミリタリー好きは読むべきです。
まず本作の世界観ですが、たとえるならファンタジーな第二次世界大戦中のヨーロッパといったところでしょうか。
音楽魔法という美しい殺戮兵器が当たり前のようにある世界でエーカとルチアは翻弄されていきます。
その心理描写は細やかで、静かに、けれど確実に引き込まれました。
しかし何といっても見応えがあるのは兵士たちが戦うシーンだと思います。
というのも、本作は音楽魔法による派手な攻撃よりも判断と選択の重さが胸に残るからです。
これはぜひ読んで確かめてほしいのですが、帝国軍の兵士も王国軍の兵士もどちらも憎めない存在です。
強く、脆く、普通で、ありふれた人間たちが戦場に立たされてどんな判断をするのか──読者はエーカを通してそれを知っていきます。
その判断がたまらなく愛おしく、切なく──そして格好いい。
もちろんエーカとルチアの今後も見逃せません。「死の音楽」とともに生きる人々の生き様をどうか見届けてください。