昔読んだはずの物語が、別の顔をして現れた
- ★★★ Excellent!!!
誰もが一度は耳にしたことのある、赤ずきんの物語を思わせる始まりです。
森と少女、そして狼。どこか懐かしくて、おとぎ話の空気をまとっています。
けれどこの物語で描かれるのは、優しいだけの童話ではありません。
狂気は突然現れるものではなく、最初から当たり前の顔でそこにある。
純愛と呼べてしまいそうな感情が、少しずつ形を変えていく過程が、ひたすら不穏で美しい——
イオリ⚖️先生の文章はどの作品もとても映像的です。
本作も森の湿度、光の差し込み方、情景や仕草、視線の動き……もう自然と頭の中に立ち上がってきます。
そして、童話という枠を借りながら、この作品は読者に問いを投げかけてくるのです。
――ねぇ、自分たちは、本当の「赤ずきんちゃん」をどんな気持ちで読んでいたんだっけ?