壊れたものは直せばいい。でも家族だけは――

 喪失を抱えた父と小さな相棒ポメラニアン――この二つの視点が、読者の心を一気に物語へ引き込みます。日常の温もりから一転、思いもよらない“転移”が起きる導入はスムーズで、切なさと希望が同時に胸を揺らすシーンが続きます。
 父の不器用な優しさ、娘とのすれ違い、そして“壊れた世界を直す修理屋”という主人公の職業が物語全体に温度を与えていて、とても魅力的です。
 さらに相棒であるくーちゃんが、ただのマスコットではなく物語を支える大切な存在として光るのも本作の大きな魅力で優しさ/家族愛/冒険が丁寧に混ざり合う、本当に心に染みる作品です。
 初見の方にも強くおすすめできます。

その他のおすすめレビュー

桐谷アキラさんの他のおすすめレビュー98