丸の内と神隠し屋敷をつなぐ銀行譚

 都会の銀行員たちの日常と、じわじわ滲み出す異界の気配が交錯する導入がとても素敵です。マイナス金利や店舗削減などのリアルなお金の話が、そのまま「見えないマイナス」を刻むホラー要素に繋がるのがこの作品の特異なところになっています。

 怪談を大喜びで追いかけに行く藤崎と、常識人だけど巻き込まれていく周囲のやり取りが軽妙で、読んでいる側も「怖いのに楽しい」感覚になれること請け合いです。

 銀行×怪談という組み合わせの妙と藤崎ウォッチング組や、山本五郎左衛門為時という強烈なキャラクターも一人一人が怪談の語り部としての魅力があります。

 現実と異界が混じるような雰囲気が好きな方にお薦めします!

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