駅前のインド料理店

中原圭一郎

駅前のインド料理店

「キーマカレーが食べたい」

 妻の一言により、本格カレーをテイクアウトすべく、私は柏たなか駅前のインド料理店へ向かった。

 店内に入ると、店員が私の前へやってきた。

「Aセットを二つ。テイクアウトで」

「トリニクガハイッタマメ」

 突然、彼は言った。私は何のことかわからず、固まってしまった。

「トリニクガハイッタマメ!」

 彼は再び言った。

「鶏肉が入った豆?」

 私が言うと、彼は、もっともらしく頷いて

「トリニクガハイッタマメ」

 と言った。

「えっと、一つはキーマカレー、もう一つはマトンで」

「カラサハ?」

「どちらもマイルド、甘口で」

 その後、サフランライスかナンか、飲み物も指定し、注文は完了した。15分ほどかかるといわれたが、10分しないうちに商品は出てきた。

 無事に購入することは出来た。しかし、疑問は残る。

 Aセットを注文する私に、なぜ突然鶏肉が入った豆と連呼してきたか、今となっては、はっきりしたことはわからない。

 ただ、今まで何度か利用した経験からすると、彼はきっと、今日の日替わりカレーは、鶏肉が入った豆のカレーだと伝えたかったのではないか、と推察される。

 妻は、キーマカレーが最高においしかったといっていたし、私の食べたマトンカレーの味も感動的だった。

 謎のやり取りが発生したとしても、我々がこの店を再び利用するであろうことは、間違いない。

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