ノマドと飛行船

羅貝愛斗

日記

第1日



僕じゃない僕も

それに騙されていく日常も

愛おしいはずだった

綺麗に汚れた世界は

相変わらず僕を嫌っていて

またひとりになってしまった

別にそれでいいって

言える強さもないまま

君を羨んで

明日に期待して

冷たい朝を迎えていく

僕は僕が嫌いだ



第2日



君を見たい

あの日聞いた歌を思い出していた

彷徨いすぎた今日は

少しここで息を吐こう

綺麗な街だった

それが好きなはずだった

醜くなったって

それを愛していたかった



第3日



綺麗な世界だった

でもひとつだけ汚れている場所があって

僕はそれが嫌いだった

それは僕に纏わりついてきて

歩くたびに爪を立ててくる

汚いのは僕だったんだな



第4日



君が見たい

新しい世界への旅を

始めたつもりでいたのに

どこまでも荒廃だらけの

静かな道を進んでいる

後戻りできないのは

僕がそれを望んでいるからなんだ

君を見たいのに

君はそこにいないのに

惨めだと言えたら

この感情はなおのこと馬鹿らしい



第5日



どうにも生きるのが下手なもので

僕はこんな所で蹲っている

君がいたらいいのに

僕の手を引いてくれたらいいのに

こんな僕を叱ってくれたらいいのに

目が覚めたら僕は空っぽで

何もない街を眺めている

綺麗かもしれない

もう消えてもいいかもしれない

そんな朝だった



第6日



少し歩いたところで

君のような人を見つけることもある

それが君かどうか

僕には分からない

それが君じゃなくても

別にいいと思えるくらい

身勝手な人生だった

愛や寂しさはどこかに置いてきた

これは空虚じゃなくて

ただの欠陥だよ

曖昧にしてきた傷は

もう膿が溢れてきて

それに見ないふりをした



第8日



馬鹿だなあ 僕は

こんなところで君に会えるはずがないのに

君はいないのに

君は来てくれないのに

僕がずっと見たかったのは

本当の僕なんだから

あの日 君を捨ててしまった

だからもう君は僕に会えないんだ

僕は僕じゃないのに

僕は君じゃないのに

君の手で終わらせてほしいって

そんなことを思っただけ



第19日



もう時間がないんだろうね

なんとなく分かるんだよ

僕のことだから


ごめんね


君を愛していたかった

君のことも

君を取り巻くすべてのことも

抱きしめてあげればよかった

君はどこにもいないんだね

僕は壊したんだ

もう生まれてこれないように

君の形が分からないくらい

君を傷つけた

でも君は優しくて

最後に僕の手を握ってくれた


さようなら


もう二度と

僕のような人間が生まれないことを願って












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ノマドと飛行船 羅貝愛斗 @Ragai19

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