月明かりとススキのざわめきの中で、ふたりの距離と心の温度差がじわじわと浮かび上がってくる掌編でした。「帰る場所」と「どこまでも行けそうな気配」のあいだで揺れる感情が、言葉にされないまま伝わってくるのが切なくて好きです。ビールや煙草の匂い、湿った風、肌に触れる雨粒の感触が重なって、読後も身体のどこかに残るような余韻がありました。自分のことがいちばん恥ずかしくて、でも目をそらしきれない――そんな気持ちを、静かにすくい上げてくれる物語だと感じました。
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