「雨と鉄格子の16年――“生きたい”がこぼれる瞬間」

  • ★★★ Excellent!!!

国が“守られている”せいで、人も魔法使いも努力を手放していく――
この導入がまず不気味で、世界の歪みが静かに伝わってきます。
その歪みが、双子に向けられる迷信と暴力として一気に降りてくる第1話が強い。
生まれた瞬間から「生贄」を決められる理不尽さが重いのに、ステラとクレアの会話がちゃんと“姉妹”で、そこが余計に苦しくなります。
パンのくだりみたいな小さな優しさがあるから、読者も一緒に息をつけるし、同時に「この時間が壊される」予感が増していく。
第3話では、ここまで抑え込まれてきたステラの感情が、一気に表に出る瞬間が胸に刺さりました。
「死にたくなかった」って言葉が飾りじゃなくて、16年ぶんの重さで落ちてくる。
ここまで読んだだけでも、この物語は“世界”より先に、まず“ひとりの命”を丁寧に拾い上げてくれる作品だと感じました。

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