“ログアウト不可”の手触り

  • ★★★ Excellent!!!

最初は、未来のVRが当たり前になった世界の話として、落ち着いた説明から始まります。
けれど読み進めるほどに、「便利さ」よりも「逃げ場所としてのVR」の匂いが濃くなっていき、主人公の過去と現在が静かに重なって見えてきました。
印象に残ったのは、戦闘そのものの爽快さよりも、“手応えがリアルすぎる”違和感です。
血の臭い、焦げた匂い、熱さや冷たさの痛み――その感覚が出てきた瞬間、空気が一段冷えたように感じました。
「いつものゲーム」のはずなのに、そこだけ現実の手触りになってしまう。そのズレが怖い。
もう一つ、NPCのはずの相手がやけに生々しく喋り、こちらの言葉にも反応してくるところも、落ち着いて読めない不穏さがあります。
派手な力の見せ場はしっかりあるのに、読後に残るのは達成感よりも「何かがおかしい」というざわつき。
このざわつきが次にどう形になるのか、確かめたくなる読み心地でした。

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