静かに迫る負け犬と奴隷の剣闘物語

ep14まで拝読。
獣人達が支配する、力が全ての“地下格闘技場”
そこで負け続きの蝙蝠『ゼル』
最下層の下働きである人間『リフ』

価値の無い二人の出会い。
本作は獣人達による地下闘技場での試合結果が主軸となって進行する。


獣人の咆哮と喧騒に包まれているはずの世界でありながら、場面の切り取り方は静謐。

読み手に届けられるのは負け続きのゼルの憎まれ口と、生きる事を諦めたリフの会話にもならないような会話だ。

情感を極力抑え、淡々と描かれる二人の関係は熱いものではない。
小さじ1杯ほどの哀れみと好奇心。
この匙加減が見事で、二人のやりとりに目が釘付けになってしまう。

それはまるで、無声映画かフランス映画でも観ているような心持ちになる。


だからといって退屈を心配する必要はない。
描写に負けず劣らず、物語の展開も場に即した見事な切り口で楽しませてくれるのだから。

本作はBLと銘打っているが、あまり構えずに一度、目を通していただきたいと思う。

この作品の美しさ、優しさが正当に評価される事を私は願ってやまない。

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