風俗街で暮らす天才女子高生・湊川凪は、世界を演算する異能を持つ。
量子計算級の解答をきっかけに、同級生の新開地朔と出会うが、家庭環境は次第に彼女を追い詰めていく。
第1章までのレビューです。
まず圧倒されるのは、凪の視線を通して歩いているかのような街の描写。読者は彼女の目を借りて、風俗街の日常に足を踏み入れることになります。
続いて浮かび上がるのが、凪の極端な凸凹感。量子コンピュータでなければ現実的に解けない計算を軽々とこなす一方で、その才能ゆえの弊害に本人が振り回されている。
なぜそんな歪みが生じるのか。
朔の視点を通して物語を追ううちに、凪が見ている世界の輪郭が少しずつ立ち上がってきます。
この「凪から見た世界」がどこへ向かうのか。
自然と最後まで見届けたくなる一作です。
この小説の各話を見ていくと、どんどん自分が未知の世界に投げ込まれて行くような気がしてくる。
圧倒的迫力と、リアリティが生み出す二人のみずみずしい関係性を見ていると、不思議と何かの問題を解いているような気持ちになってくる。
複雑に絡まっている毛糸の玉を、作者のわかりやすく、それでいて隠すところはしっかりと隠す文体がゆっくりと、ほどいていく感覚に、あなたも心動くはずだ。
物語の最後に何があるのかはわからないが、最後まで見届けたくなる魅力を、しっかりと持っている。
二人の冒険に、正解はない。
なぜならこれは、未解決問題なのだから。
観測者(=少年)と特異点(=少女)の瑞々しい触れ合い。
そこへ<量子的演算能力>という途方もない謎が融け合った壮大な野心作です。
まず物語への没入を作り出すのは、都市風景・学校生活のリアリティ。
その中で懸命に光を探す少女・凪の姿が胸を締め付けます。
一方で主人公・朔の科学的思考が全体に一本の軸を通し、物語の現在地を見失うことはありません。
そんな彼の中でピースが繋がれていき、物語の主題が提示される第一章ラストは圧巻の一言。
そこから先はまさに予測不能。
難解な概念は混じっても、読者へ寄り添うような温かみのある文体が突き放しません。
カクヨム青春SFの紛うことなき最高峰候補作。
透き通るような科学ミステリーをぜひお試しください!
量子計算の硬質な輝きと、都市の影に立つ少女の体温が同じページで鼓動する――そんな物語です。最新のTSP(巡回セールスマン問題)やアダマールゲートといった語彙が出てきても、焦点はつねに『誰が、なぜ、その選択をしたのか』。理屈は心を照らす灯りとして機能し、読者を遠ざける壁には決してなりません。
まず掴まれたのは第1話。区立図書館の自習スペースで、朔が席を外した僅か30分のあいだに、白紙の解答用紙の最下段だけに厳密解の都市順が静かに書き込まれる。残されたのは、一本の長い黒髪。量子コンピュータでも3時間を要した計算を『手書き』で再現する不可解さと、上部の余白が「途中計算を書くつもりだったのか?」という示唆を残すミステリ設計が見事で、以後の『観測者は誰か』という主題が一気に立ち上がります。
そして胸に残ったもう一幕は、第10話の木陰の昼食。素パスタや自家製ナンで飢えをやり過ごす凪の前に、転校生・二宮が現れ、チキンをはさんだ「即席ナン・サンド」を一緒に頬張る場面です。名前を『順位付き』で呼んでしまう癖ゆえに孤立してきた凪が、「凪ちゃん」と自然に呼ばれ、おかずを『交換』できたただそれだけの出来事が、都市の格差を越える小さなブレークスルーとして描かれる。学術トリックの鮮烈さと等価の重量で、生活の質感と希望の手触りを置いていく筆致に拍手です。
量子の話題は豊富でも、比喩や会話が軽やかで読み口は端正。十日野と安倍子の都市対比、虹色の視覚ノイズ、教師との緊張、クッキーの甘さ――理(ことわり)と情(こころ)の配合比が絶妙で、読み進むほど『光』が増す一作。島アルテさん、続きも全力で応援します。
『第12話雨音ノイズキャンセリング』まで拝読し、レビューいたします。
『シュレーディンガーは未来を詠んだ』は貧困地域に暮らす孤独な天才女子高生『湊川凪』との出会いを描く、理系青春ドラマです。
本作の素晴らしい所は天才女子高生『湊川凪』が作中において“天才役”ではなく、しっかりと孤独な天才として存在し、葛藤する点にあります。
スクールカースト、貧困⋯日常に潜む
多くの問題に晒される『天才女子高生 凪』を『理系少年 朔』の視点を中心にして非常に丁寧に描いています。
少女が少年と出会うことで少しづつ変わろうとする姿は微笑ましく、愛らしい。
そして現在最新となる12話では非常に魅力的な引き⋯
知的な青春劇を望まれるのであれば、島アルテ様作『シュレーディンガーは未来を詠んだ』を強くお勧めいたします。
孤独を背負う天才少女の姿が、とてもリアルに描かれていると思いました。
ただの「美少女天才」という記号ではなく、無意識の癖や、出自による偏見、そして本人の気づかない言動が、周囲からの孤立へとつながっていく。そうした“浮いてしまう理由”が丁寧に積み重ねられているからこそ、彼女は物語の中で生きている人間に見えます。
実際、現実にも突出した知性や美貌を持つ人ほど、社会の中で誤解され、浮きやすい。だからこそ、ここに描かれたヒロイン像は決して荒唐無稽ではなく、むしろ痛切な現実を映していると感じました。
彼女の小さな一歩に、強く胸を打たれます。
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ごく個人的な体験として、仕事・学校・ゲーム関連などで、明らかにIQの高い女性に何度も出会ってきました。彼女たちの多くは一目で美しいとわかる方々であり、さまざまな理由から周囲から浮いてしまう存在でした。ですので、この設定は「アンリアル」ではなく、むしろ限りなくリアルに感じられます。