まるでコンピューターのような演算能力と、謎の危険予知能力を持つ不思議で不器用な貧困女子高生の凪の青春を描いた物語。
彼女は間違いなく天才だけど、それが必ずしも彼女にとって利になるという訳ではない。天才ゆえの悩みというものはあるし、風俗街に生まれた彼女は周囲の不理解や貧困にも苦しむ事になる。それでも、せめて寄り添ってあげようとするもう一人の主人公たる朔や学校のクラスメイト。まさに笑いあり涙ありの青春ではないか。遠足に出かけたり、部屋に盗聴器を仕掛けられたり。
果たして、彼女は呪縛を解いて彼女らしく生きる事が出来るのだろうか。
本作は、風俗街に近い貧しい地域から進学校へ通う天才少女・湊川凪と、量子コンピュータに関心を持つ秀才の新開地朔の出会いを描いた物語です。
凪は数学的な天才でありながら、独特な認知の癖や家庭環境の影響で学校では孤立しています。
そんな彼女に興味を持った朔が話しかけたことをきっかけに、凪の世界は少しずつ広がっていきます。
天才的な知性と不器用な人間関係を併せ持つ凪というキャラクターがとても魅力的で、応援したくなる主人公でした。知的でありながら温かさのある物語で、数学や量子コンピュータというテーマが青春ドラマと自然に結びついているのも印象的です。読後には、優しい余韻が残る素敵な作品だと思いました。
時は近未来の日本。量子コンピューターが実用段階に入り始めた中で、それに興味を持つ高校生、新開地朔は、とある研究レポートに目を通していた。
動的非対称TSP
いわゆる巡回セールスマン問題の中でも最難関とも言える問題だ。
全ての都市を1回だけ巡って、戻ってくる最短経路を求める。
ただし、A→BとB→Aの経路のコストは非対称であり、さらに、時間経過とともに都市間の移動コストや訪れるべきリスト自体が変化する。
30都市をめぐる厳密解となると、その組み合わせはもはや天文学的なものとなり、最新鋭の量子コンピューターを使っても簡単には終わらない。
そのはずだった。
だが、小休止のつもりで30分ほど席を離れた朔は、席に戻った時に、信じられないものを目にする。
そこには手書きの文字で、この問題の厳密解とも言えるものが記されていた。
それから程なくして、朔は出会う。その少女に、
「あなたは……学年六位の……新開地、朔君」
人の名前を呼ぶ際に付加される奇妙な修飾
0 → 5 → 4 → 2 → 1 → 3 → 0 235
数学教師が出した短時間で解答不能な問題の答えを即座に導き出す異常な頭脳
湊川凪ーー
類まれなる頭脳を持つ反面、社交性に乏しく、触れると壊れそうな危うさを持つその少女の内面に触れ、彼女の事が気になりはじめる朔。
そして、凪もまた、孤立しがちだった自分の欠点に気づかせてくれた優しい朔の事が気になり始めていた。
そこから世界は広がっていく。
凪をとりまく複雑な家庭環境
朔の父親の残した都市の記憶
少しずつ広がり始めた凪の交友関係の中で、自然と2人の道は交わり始める。
もつれあう感情に、交わらないベクトル
その果てにどんな物語の結末が待っているのか
難解な数学の問題を起点としつつも、歯がゆい人間模様を繊細に描く描写が見事な物語です。
是非ご一読を
裕福な家庭が多く居住する新興の街区と風俗街を擁し貧しい人たちが暮らす街区が隣り合う街。
主人公の朔は風俗街に暮らす少女、凪と出会う。
彼女は量子コンピュータでも計算に時間のかかる難題を瞬時に解いてしまう異能を持つ。
それはまさに脳内に高性能な量子コンピュータを宿しているかのよう。
世界を変えうる能力を持った少女は、だが、その力を意識して使いこなせているわけでは必ずしも無い。強力な異能は別の認知障害の要因ともなりうる。
そして彼女は同時に貧民街ならではの経済的ネグレクトという軛も背負う。
生体量子コンピューティングというSF的な題材と格差社会という社会派要素。
そしてそれらを堅苦しく無く読ませる文章力。
異能を背負った少女と、そんな彼女とともに歩もうとする主人公の行き先を見ていきたい、そう思わせてくれる小説です。是非ご一読を。
風俗街で暮らす天才女子高生・湊川凪は、世界を演算する異能を持つ。
量子計算級の解答をきっかけに、同級生の新開地朔と出会うが、家庭環境は次第に彼女を追い詰めていく。
第1章までのレビューです。
まず圧倒されるのは、凪の視線を通して歩いているかのような街の描写。読者は彼女の目を借りて、風俗街の日常に足を踏み入れることになります。
続いて浮かび上がるのが、凪の極端な凸凹感。量子コンピュータでなければ現実的に解けない計算を軽々とこなす一方で、その才能ゆえの弊害に本人が振り回されている。
なぜそんな歪みが生じるのか。
朔の視点を通して物語を追ううちに、凪が見ている世界の輪郭が少しずつ立ち上がってきます。
この「凪から見た世界」がどこへ向かうのか。
自然と最後まで見届けたくなる一作です。
この小説の各話を見ていくと、どんどん自分が未知の世界に投げ込まれて行くような気がしてくる。
圧倒的迫力と、リアリティが生み出す二人のみずみずしい関係性を見ていると、不思議と何かの問題を解いているような気持ちになってくる。
複雑に絡まっている毛糸の玉を、作者のわかりやすく、それでいて隠すところはしっかりと隠す文体がゆっくりと、ほどいていく感覚に、あなたも心動くはずだ。
物語の最後に何があるのかはわからないが、最後まで見届けたくなる魅力を、しっかりと持っている。
二人の冒険に、正解はない。
なぜならこれは、未解決問題なのだから。
観測者(=少年)と特異点(=少女)の瑞々しい触れ合い。
そこへ<量子的演算能力>という途方もない謎が融け合った壮大な野心作です。
まず物語への没入を作り出すのは、都市風景・学校生活のリアリティ。
その中で懸命に光を探す少女・凪の姿が胸を締め付けます。
一方で主人公・朔の科学的思考が全体に一本の軸を通し、物語の現在地を見失うことはありません。
そんな彼の中でピースが繋がれていき、物語の主題が提示される第一章ラストは圧巻の一言。
そこから先はまさに予測不能。
難解な概念は混じっても、読者へ寄り添うような温かみのある文体が突き放しません。
カクヨム青春SFの紛うことなき最高峰候補作。
透き通るような科学ミステリーをぜひお試しください!
量子計算の硬質な輝きと、都市の影に立つ少女の体温が同じページで鼓動する――そんな物語です。最新のTSP(巡回セールスマン問題)やアダマールゲートといった語彙が出てきても、焦点はつねに『誰が、なぜ、その選択をしたのか』。理屈は心を照らす灯りとして機能し、読者を遠ざける壁には決してなりません。
まず掴まれたのは第1話。区立図書館の自習スペースで、朔が席を外した僅か30分のあいだに、白紙の解答用紙の最下段だけに厳密解の都市順が静かに書き込まれる。残されたのは、一本の長い黒髪。量子コンピュータでも3時間を要した計算を『手書き』で再現する不可解さと、上部の余白が「途中計算を書くつもりだったのか?」という示唆を残すミステリ設計が見事で、以後の『観測者は誰か』という主題が一気に立ち上がります。
そして胸に残ったもう一幕は、第10話の木陰の昼食。素パスタや自家製ナンで飢えをやり過ごす凪の前に、転校生・二宮が現れ、チキンをはさんだ「即席ナン・サンド」を一緒に頬張る場面です。名前を『順位付き』で呼んでしまう癖ゆえに孤立してきた凪が、「凪ちゃん」と自然に呼ばれ、おかずを『交換』できたただそれだけの出来事が、都市の格差を越える小さなブレークスルーとして描かれる。学術トリックの鮮烈さと等価の重量で、生活の質感と希望の手触りを置いていく筆致に拍手です。
量子の話題は豊富でも、比喩や会話が軽やかで読み口は端正。十日野と安倍子の都市対比、虹色の視覚ノイズ、教師との緊張、クッキーの甘さ――理(ことわり)と情(こころ)の配合比が絶妙で、読み進むほど『光』が増す一作。島アルテさん、続きも全力で応援します。
『第12話雨音ノイズキャンセリング』まで拝読し、レビューいたします。
『シュレーディンガーは未来を詠んだ』は貧困地域に暮らす孤独な天才女子高生『湊川凪』との出会いを描く、理系青春ドラマです。
本作の素晴らしい所は天才女子高生『湊川凪』が作中において“天才役”ではなく、しっかりと孤独な天才として存在し、葛藤する点にあります。
スクールカースト、貧困⋯日常に潜む
多くの問題に晒される『天才女子高生 凪』を『理系少年 朔』の視点を中心にして非常に丁寧に描いています。
少女が少年と出会うことで少しづつ変わろうとする姿は微笑ましく、愛らしい。
そして現在最新となる12話では非常に魅力的な引き⋯
知的な青春劇を望まれるのであれば、島アルテ様作『シュレーディンガーは未来を詠んだ』を強くお勧めいたします。
孤独を背負う天才少女の姿が、とてもリアルに描かれていると思いました。
ただの「美少女天才」という記号ではなく、無意識の癖や、出自による偏見、そして本人の気づかない言動が、周囲からの孤立へとつながっていく。そうした“浮いてしまう理由”が丁寧に積み重ねられているからこそ、彼女は物語の中で生きている人間に見えます。
実際、現実にも突出した知性や美貌を持つ人ほど、社会の中で誤解され、浮きやすい。だからこそ、ここに描かれたヒロイン像は決して荒唐無稽ではなく、むしろ痛切な現実を映していると感じました。
彼女の小さな一歩に、強く胸を打たれます。
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ごく個人的な体験として、仕事・学校・ゲーム関連などで、明らかにIQの高い女性に何度も出会ってきました。彼女たちの多くは一目で美しいとわかる方々であり、さまざまな理由から周囲から浮いてしまう存在でした。ですので、この設定は「アンリアル」ではなく、むしろ限りなくリアルに感じられます。