第1話の構成が二段仕掛けになっている点が秀逸です。冒頭、追い詰められた女性が「黄昏神社」で救われる優しいエピソードを見せたあと、同じ画面に表示されていた「もうひとつの神社」――呪いを請け負う「逢魔ヶ神社」の存在を提示する流れは、救いと闇が紙一重で隣り合っているという本作のテーマを端的に示していました。
主人公・鈴木茉莉のいじめ描写は、誇張のない、生々しい筆致で描かれています。机の上の菊の花、わざと倒される花瓶、汚れた雑巾で「拭いてあげる」という白々しい小芝居――暴力ではない、地味で陰湿な嫌がらせの積み重ねが、レビューにある「虐めを受けながらも虐めっ子すら助けようとする真っ直ぐな善良さ」という茉莉の人物像の土台として丁寧に描かれていました。誰も助けてくれない教室の空気、そして「自分も逆の立場だったらそうする」と諦観する茉莉の心情は、読んでいて重さを感じる場面です。
「貴方の恨みを晴らします。憎い相手を呪い殺す方法」というセンセーショナルなタイトルに対し、茉莉が結局クリックをためらい、踏み込まなかったという描写も印象的でした。レビューで言及されている「ゲゲゲの鬼太郎」的な、後味の悪さを避けつつも芯のある作風が、この最初の選択の場面からすでに感じられます。
あとがきにある「あまり理不尽な展開は避けていく」という方針通り、つらい状況を救いのない絶望のまま終わらせない作風のようで、レビューの「怖さとユーモアと人情が絶妙に絡み合う」「静かに忍び寄ってくる方がよっぽど後を引く」という評価にも頷けました。妖怪文化への愛情と、現代的な悩み(いじめ、ネットの誘惑)を組み合わせた連作形式は、続きを読み進める意欲を起こさせる導入です。
えー、世の中にはね、不思議な話ってぇのがいくらでもあるもんでして。
この「おぼろのことり」ってぇのがまた、派手に驚かせるんじゃない、じわぁっと来るんでございますよ。
夜道を歩いてるとね、「あれ、今の何だ?」って振り返ること、あるでしょう?
ああいう“気配”をね、上手いことすくい上げて話にしてるんで。
一話一話がね、長屋の噂話みたいにふわっと始まって、気づいたら「あれ、ちょいと妙だな」って。
で、オチがドンと来るんじゃない、すーっと消える。これがまた粋でね。
いやしかし、怖い話ってのは大声で脅すもんじゃないんですな。
こうして静かに忍び寄ってくる方が、よっぽど後を引くってぇもんでございます。