誘因狂時代……

 アイザック・ニュートンいわく
――私は天体の動きは計算できるが、人々の狂った行動は計算できない
 地球に生まれたのが、こちらのニュートンで良かったとつくづく思う。

 他の惑星に生まれたハンサムな男は、「あらゆる人を惹きつける」その魅力から万有引力に気付く。

このハンサムな男のドッペンゲルガ―が、ニュートンであるのか。
こちらのニュートンのドッペンゲルガ―が、他惑星のハンサムな男であるのか。

ここで、言及してはいけない。
実数界と虚数界において、鏡という境界を通して対面しうるのと同等なのであるから。
(何を言っているのだろう)

 大事なことは、この「あらゆる人を惹きつける」魅力によって、恐らく導き出しただろう万有引力の発見に至った彼が、無情な行き違いで豊満な壁に吸い込まれてしまう。
 それは、喜劇王チャールズ・チャップリンの「殺人狂」のようでもあるし、森羅万象の指し示す先は何者も抗えないという自然主義的な示唆が見えてくる。

 規則的な物理的法則(実存)と不確かな因果律(観念)は、相反する概念として、常に対立する。
 それが、ここで交錯するとは、もうコペルニクス的転回ではないだろうか。

 このような展開を構成しえるのは、筆者、青山翠雲氏以外にいるだろうかと、望天の念をもって賛辞を贈る。

 「何の話かさっぱり分からないじゃないか」と、感じられていると思います。

 ええ、そうでしょうとも。私はこの世界の概念のみ、お話しております。
 その仔細は、ご自身の目で確かめて頂きたいのです。

 一度、ご堪能くださいませ。

 もしも、余力があればのお話。
『スー』
『テイク ミィ トゥー アナザー スカイ』
 こちらの二作品を通読されてから、再読すると、更に世界観が広がって、本作の味わいも深くなると思います。