青田買いするなら今! 書籍化に耐えうる本格ファンタジー!

端正にして美麗。
本格にして重厚。

この作品は、書籍化に耐えうる、異世界ファンタジー作品である。


……と書いて終えることもできるけど、それではこの作品の魅力を語りつくせない。
この作品は、まるで映画のようであり、ゲームのようでもある。
文字が質感をともなって現れ、読者はたちまちのうちに、その世界の中に没入するだろう。

霧の立ち込める村の酒場、猥雑な都市と裏通りの礼拝堂、夜の宮殿、森の中の診療所、それに――亡国の離宮跡。
文字だけでも、ファンタジー好きならワクワクする道具立てではないか。
それらひとつ一つの舞台装置が、巧みな描写により強い印象で立ち上がってくる。

そして、その強い舞台に負けることのない、亡国の復讐姫シャノアをはじめとした登場人物たち。
この作品は、登場人物がとにかく動く。
走り、飛び、転がり、戦う。躍動感にあふれる動きと、それを追うカメラワーク。
彼女たちひとり一人が、それぞれに抱えた過去と運命に向き合い、生を全うしようとしている。
彼女たちは、物語の中で自分の役割を全力で演じている。

本レビュー投稿時点では、まだ14話。わずか3万文字強。
それだけの文字数で、この作品はひとつの世界を描きあげている。


奇貨居くべし。
追いかけるのなら、早いほうがいい。

いずれ彼女が高みに至り、再び王冠を戴いてからでは、もう遅いかもしれない。

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