命を賭してでも、手に入れたいものはありますか?
- ★★★ Excellent!!!
そこに行けば、どんな夢も叶うという。
どこかにあるといわれて、みんな行きたがる遥かな楽園。
ただ生きることだけでも苦しさに満ちたこの世界で、多くの登山家がそこへ旅立ったが、
その道のりは、あまりにも遠いものだった――。
物語は、圧倒的に過酷な環境で幕を開ける。
吹きすさぶ氷と雪、薄い酸素、極度の低温、生命の一切を否定する極地。
ヒマラヤ山脈のエベレストよりも遥かに高い高度1万メートルに、少女・カレンはいた。
そこが地球ならば、暴風が吹き荒れる対流圏の入り口であり、気温はマイナス50度にもなる。
魔法の力を使っているとしても、常人にはたどり着けない死の世界だ。
だが、彼女はその極限下でクレバスに転落、重傷を負う。
(こんな所で、死ねない……!)
少女の叫びを聞き届けたのは、フレイルとイリーナ、2人の登山家だった。
「俺らに助けられる手立てなんてないぞ!」
「嘘! あるでしょう! 一発限りのとっておきが!」
この3人の出会いが、それぞれの運命と、世界を変える。
なぜ世界がこうなったのか? 楽園とは何か?
3人が命を賭して手に入れたいものは、そこにあるのか?
――楽園とは、心の中に生きる幻なのか。