17話まで拝読しました。
静かな物語なのに、読んでいる間ずっと、無意識に息を詰めてしまいそうな作品です。
派手な展開で煽られるわけではないのに、常に足元がじわじわ冷えていくような不穏さ。
読者だけが「何かおかしい」と気づいてしまう、あの感覚にやられました。
この作品は、設定をただ説明するんじゃなくて、
登場人物が「何を知っていて、何を知らされていないか」というズレだけで、
緊張感を作っています。
同じ街で同じ時間を過ごしているはずなのに、見えている世界が決定的に違う。
そのズレの積み重ねが、気づくと後戻りできない所まで連れていかれました。
特に印象に残ったのは「名前」の扱いでした。
呼ぶこと、隠すこと、名乗れないこと。
それが相手を守る優しさにもなれば、逃げられない枷にもなる。
その不器用で、一方的な愛情の形がとても苦しくて、でも目が離せませんでした。
ここまで読み終わった後に残ったのは、安易な安心感なんかじゃなくて、
「……ここからが、本当の地獄(本番)なんだな」
です。
始まりは、國から遠く離れた郊外。
仲のいい兄妹の優しい記憶が、思い出のように描き出されます。
絵に描いたような平和な世界。
それを一瞬にして壊したのは、後の世で"オルド街虐殺事件"と呼ばれるような大事件。
あまりにも悲惨すぎるこの事件は、兄妹の絆が光るほどに嫌な色を滲ませます。
この事件で容姿が変わってしまうほどに心に傷を負った少女•ヨウ。
そんな彼女を棘の道へと進ませたのが、『オルドの亡霊』と呼ばれる噂話。
当時八歳だった少女はこの亡霊を探すため、軍人となり生きてゆくのです。
物語が進むにつれて明かされる兄妹の秘密。
記憶と想い。
さまざまな人物が織りなす、切なくも美しい物語をまだ読まれていない方はぜひ。