恐怖の幕開け


 そんなわけで、運命の日の当日も、頭痛薬でお茶を濁しつつ、平常通り出勤していました。


 出勤と言ってもアルバイトですが、進学塾の国語の長文読解の問題を丁寧なコメント付きで添削するという、わたしにとっては実にやりがいのある仕事。たくさんの素敵な友達にも恵まれ、10年以上通い続けていた、大好きな職場でした。


 異変を感じ始めたのは、昼休みが近づいてきた頃(いよいよ、真の悪夢の始まりです)。ふと気づくと、目の前の生徒さんの答案の解答が、全く頭に入ってこないんです。目の疲れ? それとも、頭痛のせい? でも、決められたノルマはあるし、添削はこなしていかなくてはなりません。「何かが変だ」と思いながら、どうにか午前中はやり過ごしました。


 昼休み。表向きはいつもと同じように、友達とおしゃべりしながら、お弁当を食べていたと思いますが、この時点で、頭はかなりぼんやりしていた記憶があります。


 そして、昼礼後、午後の添削業務開始。気持ちを切り替えて、午前中の続きに取りかかろうとしましたが、ここで人生で初めての状況を体験します。


「…………?」


 そうです。目は見えているのに、字が読めないんです。


 ちょっと、意味がわかりませんよね? その時のわたしも、同じ気持ちでした。次回、「字が読めない」とはどういうことなのかをもう少しくわしく説明したあと、思い出すだけでゾワッとする瞬間の回想に移ります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もう一度、本が読みたい! 伊東ミヤコ @miyaco_1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画