お洒落な大人の雰囲気と、怪談の不穏さ。「バー×怪談」のブレンドの味わい

 「怪談×バー」というお洒落な雰囲気。このポップさとゾワっと来る感じが同居する感じがなんといっても良いです。

 オカルトライターをする主人公は行きつけのバーで「常連客」のOさんと対話する。Oさんはどうやら「とっておきの話」を持っているらしく……。
 そしてOさんの話が始まる。彼が「とある信号機の前」で体験したという話。

 道路、というのは日常的に目にするものでもある一方、交通事故などによってふとした瞬間に人の命が奪われる場所でもある。
 無機質なアスファルトや信号機の灯り。そんな風景の中に混ざり込む、「不穏な何か」の気配。

 Oさんの語る「怪談」。信号に長く待たされる経験。そして、信号が変わった後の出来事。それはとても身近なもので、自分がその現場にいる様子なども鮮明にイメージすることができます。
 オチに到達するまでは、「ああ、自分も前にこういうのでヒヤっとする経験あった」とか考えながら読みました。

 でも、そこから先に「本領発揮」な瞬間が待っています。

 なるほどなあ、としみじみ感嘆しつつ、そこからも更に油断ならない展開が。

 現代は「怪談師」たちが集まるバーが六本木などにはあるのだとか。村上ロック氏などの名のある怪談師がそこに集まって怪談を語り合うという文化もあるという。そうしたバーでの怪談をYOUTUBEなどで視聴したことのある人も少なくはないかもしれません。
 
 バーの静謐感のある大人な雰囲気。そこで語られる怪談。お洒落な感じと不穏な感じが綺麗にブレンドされ、一種独特な「ホラー」の風味に仕上がる。
 ちょっとハイソで大人な怪談。他にはない味わいを楽しむことができます。

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