U24杯大賞作品 現実と仮想が溶け合う、ゾク切ない謎解き青春譚
- ★★★ Excellent!!!
読了しました。
最初の数ページで一気に引き込まれて、そのまま息をつかせず最後まで連れていかれるタイプの作品でした。
貴志祐介『十三番目の人格(ペルソナ)ISOLA』の流れかな?と思って読み始めたのですが、良い意味でまったく別物で驚きました。
「イマジナリー」という題材を、ただのファンタジーや不思議現象として消費せず、現実の痛みや孤独、心の逃げ場と地続きに描いているところが凄いです。
読んでいるうちに「怖い」だけじゃなくて「切ない」「苦しい」がじわっと混ざってきて、感情の揺さぶりが強いのに押しつけがましくないのが印象的。
構成も作り込まれています。
序盤は謎と違和感を丁寧に積み上げ、読み進めるほどに見えていた景色の意味が変わっていく。
ページをめくる手が止まらなくなる一方で、読み終えたあとに「あそこ、そういうことだったのかも」と自然に振り返りたくなります。
文章はテンポがよく、会話のリズムがあり読みやすいです。
軽い掛け合いがあるのに、ずっと緊張感は途切れない。
重いテーマを扱いながら読ませる力があって、読後に余韻が残るタイプの物語でした。
ネタバレなしで言える範囲だと、「読み終わってからもう一度最初に戻りたくなる作品」でした。読後の時間ふわふわ感があります。
考察が好きな人にも、感情の物語が好きな人にも刺さると思います。