世界が5分前から始まったのなら、
そこに「乗り越える」という概念は存在しない。
世界が5分前から始まったのなら、
なぜ彼の中で、過去の痛みがこんなにも叫び暴れるのか。
5分前から始まる世界は、
崩壊を止めることができない
5分前から始まる世界は、
一緒に過去を背負ってくれない
5分前から始まる世界は、
一緒に未来を歩いてくれない
世界は偽物かもしれない。
でも、苦しみだけは本物だ。
世界が嘘でも、彼は救われない
理屈を積み上げても、
世界を否定しても、
再起動を信じても、
痛みだけは置いていけない。
世界は5分前に始まったはずなのに、
なぜ彼の中には、
十分前、一年前の痛みが
今も叫んでいるのだろう。
世界は5分前に始まったはずなのに、
なぜ彼の中には、
逃げ場がないのだろう
彼は後悔を抱きしめて、5分前に戻れるのだろうか
いわゆる「世界5分前仮説」みたいな発想を、日常の延長にスッと落とし込んだ“思考が止まらなくなる系”のサイコホラーでした。
導入がとにかく上手くて、「もし眠って意識が途切れた瞬間に、世界が更新されてたら?」っていう不安を、説明で押し切るんじゃなくて“体感”としてこちらに渡してくる感じ。読み進めるほど、当たり前だと思ってた「昨日と今日のつながり」がじわじわ揺らいで、妙に落ち着かなくなります。
怖さも、怪物が出るタイプじゃなくて、「自分の認識とか記憶とか安心の根っこ」が削られていく方向なのが刺さりました。読後にふと「今この瞬間って、本当に地続きなんだっけ?」って考えが残るのが、たまらない…。
短いのに余韻が長い作品。グロは苦手だけど、概念でぞわっとさせる話が好きな人にはかなりおすすめです。
「世界は5分前に、偽の記憶を持って創造された」 そんな哲学的な思考実験をご存知でしょうか。
もしも、眠るたびに世界がリセットされ、前日に読んだ物語の登場人物として目覚めるとしたら? ゾンビ映画を観ればゾンビの世界へ。幸せな動画を観れば平和な世界へ。 だから主人公は、寝る前に摂取する物語を慎重に選んでいました。
――それなのに。 今回目覚めたのは、彼が一度も読んだ覚えのない、あまりにも残酷で救いのない「リアリティ」のある世界。
そこは本当に「物語」の中なのか? それとも……?
『世にも奇妙な物語』のような不思議な読後感と、背筋が冷たくなる心理サスペンス。 このレビューを読んでいる貴方、今夜はどうか「ハッピーエンドの物語」を読んでからお休みください。